ニーズDB:医師インタビュー
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山口 俊晴 先生
財団法人癌研究会有明病院
消化器センター 副院長兼消化器外科部長 
消化器外科

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1.ご専門の分野について

専門は、胃がん、大腸がん、食道がん、肝臓がん、膵臓がん等の消化器系のがんである。


実施頻度の高い手技は、手術と検査である。自身による手術は年間120件程度である。現在、検査は自身では行っていない。


2.ご専門分野に関わる既存の医療機器について

■この10年で、診療成績の向上や患者QOLの向上におおいに貢献したと考えられる医療機器

1)診断
① 画像診断
CT・MRIの精度向上やPETの実用化などが顕著である。精度の向上とともに速度も上がった。それによりカテーテルを入れる必要のある血管造影の頻度が低下した。
PETを使用して、形態画像だけでなく機能画像を得られる。PETで化学療法の効果を確認できる。

2)治療
① 内視鏡
内視鏡については、従来は映像を得るためだけのものであったが、内視鏡を使った処置や治療ができるようになった。
腹腔鏡手術の際に使用する処置具が開発され、高度の技術を要する手術が広く行われるようになった。その結果、時間の短縮と低侵襲手術も実現した。その技術は腹腔鏡手術以外の通常の手術にも広く使用され、治療成績の向上に貢献している。

② 電気メス
電気メスも10年前から大いに進歩した。現在の装置は、切ったところだけに熱が加わって出血が止まる。従来は止血のために血管を糸で結んでから切っていたが、その必要がなくなった。それにより、時間短縮や出血量を減らすことができた。また、体内に糸が残らないので感染防止にも役立っている。

③ 自動吻合器
自動縫合器や自動吻合器が広く使用されるようになった。消化管は手で縫うこともあるが大部分は自動吻合器が使用されている。

④ 放射線治療
最近は放射線治療の発展が著しい。思った場所に思った量を自由に照射できるようになった。それにより副作用を軽減できる。前立腺がんであれば、小線源療法など、新しい治療も選択できるようになった。


■既存の医療機器の改良すべき点について

1)診断
① 内視鏡
内視鏡は細くなり鼻から入れられるようになったが、細いものは画質が不十分なので、細かいがんの診断は難しい場合もある。がん治療には低侵襲な治療が求められるようになったが、そのためには微小がんの早期発見が必要である。内視鏡はとくに、患者に負担の少ない細い口径のものの精度向上が必要である。


3.実現が望まれる新規の医療機器について

1)治療
① 胃(カメラ)内視鏡
胃(カメラ)内視鏡を用いた手術の際、今はワイヤーを通して電気メスを1本だけ入れて手術を行っている。しかしそれでは操作性が良くないので、複数のデバイスを使用できるようにして、手術の精度を上げることが望まれる。

② 手術用ロボット
ロボットサージャリーが臨床に応用できるのはまだまだ限られた分野であり、更なる開発が望まれる。


4.その他、医療機器の研究動向や今後の医療機器開発の方向性に対するご提言について

① 国産化の推進
上記項目であげたような機器のうち、内視鏡以外はほとんど外国のメーカーによって開発された。画像診断機器も処置具も開発は外資メーカー主導となっており、それにより大きな内外価格差が発生している。
技術力と信頼性を考えれば国内企業へ寄せる期待は大きく、今後の状況改善が望まれる。

② 研究の連携
癌研有明病院では、企業や工学系の研究者などが集う場所を整備している。このような、病院、研究所、企業の連携は技術の発展に欠かせない。
民間企業同士の連携は難しいが、海外のように企業同士の買収合併により開発力を上げ、個々の企業が持っていた技術を組み合わせることにより弱点を補い合い、あるいは新しい技術を開発すれば有望なのではないか。そのために経営者の戦略が必要とされている。

③ 省庁との関係について
医療機器開発分野に関しては厚生労働省と文部科学省、経済産業省がばらばらに関わっているので国全体の方向性がとれていない。3省庁の協調の必要性を感じる。

④ 医学教育
医療機器開発のための研究であれば、理学部や生物学部が適切なのではないか。医学部は医師になるための教育をしているのであって、技術開発には適していない。
我が国の医学部の附属病院は高度の医療を行っているとはいえ、その効率性について民間病院に比較して必ずしも良くない。また、一般臨床で頻繁にみられる患者が少ないことも教育のうえでは不利である。症例数も必ずしも多いわけではなく、例えば胃がんのように比較的ポピュラーな疾患でさえ、年間100例以上の手術症例のある医学部附属病院は少ない。症例数がすべてではないが、韓国などでは基幹病院の胃がん症例数が千を越えているところがいくつかあるのに比較すると、臨床教育にも臨床研究にも我が国の医学部附属病院は中途半端な観を免れない。医学教育において、研究にも力をある程度注ぐべきであることは理解できるが、何より臨床技術を磨くことのできる環境を卒業後には用意することが大事であると考えられる。このように考えてくると、現在の医学部附属病院は、臨床研究と臨床実習いずれにおいても中途半端な位置づけのことが多い。思い切って医学部附属病院の機能を限定して、それ以外の部分を市中の高機能の病院に臨床教育を分担してもらうことが良いのではないかと考える。つまり、複数の高機能病院と連携し、学生実習や卒後教育を連携して行うのである。このようなやり方はすでに欧米では普通のこととして行われており、大学の附属病院にそのすべてをゆだねようとする日本のやり方の方がマイナーといえる。
医学部の全員が研究者になるわけではないのだから、それよりも臨床家を育てることが先決なのではないか。そのような志向は高まっていて、症例の多いところに来て、自分の技術をとにかく磨いて、早く専門医になって技術資格を取るという医師も増えた。症例も多い癌研などの専門施設にはそのような優秀な医師が集まってくる。


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