ニーズDB:医師インタビュー
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松村 保広 先生
国立がんセンター東病院
臨床開発センター がん治療開発部 部長
腫瘍外科

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1.ご専門の分野について

専門は以前の専門は消化器がんである。現在は治験医学専門家として活動しており、専門はオンコロジーである。

研究をベースに、企業の治験アドバイザーとしてコンサルティングを行っている。具体的には、治験が安全に行われるよう、企業や医師からの意見に対してアドバイスを行っている。最低1週間に1回は企業等へ何らかのアドバイスを行っている。
国立がんセンターの治験審査委員会(Institutional Review Board:IRB)のメンバーであり、がんセンターで行われる全ての治験の審査をしている。


2.ご専門分野に関わる既存の医療機器について

■この10年で、診療成績の向上や患者QOLの向上におおいに貢献したと考えられる医療機器

1)診断
① MRI
診断機器としては、核磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging:MRI)が発展した。昔の脳腫瘍の診断はコンピュータ断層撮影法(Computed Tomography:CT)が主流であったが、この10年でMRIがCTを抜いてスタンダードになった。それは解像度を含めてMRIのほうが優れていることが明らかにされてきたからである。

② カプセル内視鏡
カプセル内視鏡は今後発展していくと考えられる。すでに臨床試験が行われており、一部の機器は認可されている。内視鏡は小型化して、飲むだけで人の手を借りずに自動的に行われるようなものがいずれは出てくると考えられる。小腸のような長い臓器では、カプセル内視鏡の有用性が今から試されてくるだろう。
③ PET
診断機器は、ポジトロン断層法(Positron Emission Tomography:PET)も含め、フォールスポジティブ(False positive)が多すぎる。診断技術は過渡期にあり、患者のQOLの向上においては、まだ結論に達していない。

2)治療
治療機器はこの10年で十分な発展を遂げていないと感じている。
たとえば、長い間に多くの腹腔鏡手術が実施されており、カプセル内視鏡も出てきた。しかしそれらが疾病の根治という意味で、本当に患者のベネフィットになり、QOLを上げているかというとまだ不十分と感じる。


■既存の医療機器の改良すべき点について




3.実現が望まれる新規の医療機器について

1)治療
外科的な機器に関していえば、ほぼ出尽くしたと感じている。
ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System:DDS)の観点では、たとえば、貼るだけで経皮的に痛みをコントロールできる方法がほしい。将来的には痛みが起こる前に、前もって痛み止めを供給できるような仕組みができるとよい。糖尿病であれば貼るだけでインシュリンを供給できるような簡便な血糖センサー等が望まれる。定型的な処置が可能な症状については、センサーで予兆を検出し、これと薬とを連動させるような予防的な処置機器やデバイスは作れるはずである。


4.その他、医療機器の研究動向や今後の医療機器開発の方向性に対するご提言について

① 予防技術・診断技術の高度化
医療機器は「予防」の観点での開発が重要になるだろう。がんによる死亡率を下げるために、早期発見を目的とした診断技術の開発が重要である。「医者いらず、費用が安い、感度・特異度が高い」ということを特徴としたスクリーニング検査法の開発が重要である。
診断技術はがんの早期発見によって死亡率を低下させる。一方、がんの治療技術は延命を図るためのもので、がんの根治や死亡率の低下につながらない可能性が高い。また、エレクトロニクスを使った治療技術はおのずと局所療法になり、全身の治療は行えない。
簡素化・機械化され、医者をできるだけ必要としない検査方法が開発されれば、現在は検診に時間をとられている医師が治療や研究に集中できるようになる。
技術的には、特殊な顕微鏡により例えば1,000個の正常細胞の中の1個のがん細胞を見分けられるような超早期診断技術が重要である。最近はがん特異抗体など抗体を作る技術が発達しており、近い将来、体内の細胞を染色して画像情報からがんを見つけられるようになるだろう。

② 在宅検診システム
早期診断を目指して、大腸がん、婦人科がん、膀胱がん等の検診法を開発中である。検体を郵送するとがんの診断ができる方法で、キットの費用は1万円以下を目指している。これができれば、家にいながらにしてがんの検診が可能になり、QOLが高まる。
この在宅検診システムのために、便の中からがん細胞を取り出す方法を開発しているが、排便約2日後の便にも生きたがん細胞を見つけている。日本の流通インフラなら便を採取して1日以内に検体を送れば検診できる。子宮がん、大腸がん、膀胱がん等の検診を年間100万人が受けるようになれば確実に死亡率は下がる。現在の検診の面倒さや患者の負担を考えると、このような検診システムを今から考えていくべきだろう。

③ 在宅健康管理システム
自宅で自分でできる管理・治療方法ができれば病院に行く頻度は少なくなる。コンピュータで自分の情報を送って医師の指示をあおぐだけでよい。簡易診療がコンピュータ化され、最終的には救急医学以外に医者はいらないというのが理想。当面は薬物の自己管理、自分で簡単にできる薬物投与システムが重要である。そのための薬物センサー、血糖値センサー、血圧センサー、痛みセンサー等の要素技術が重要となる。

④ ドラッグデリバリーシステム
治療についてはDDSに関わるコントロールリリース技術が望まれる。「病院に行く必要がない」というのがキーワードで、自宅にいながら自分で治療ができることが重要である。
病院での治療については、外科治療、放射線治療等を決められたとおり失敗がないように治療を行い、それに付随して起こりうる有害事象を抑制する管理システムが大切である。


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