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医療機器: 上肢用プレートシステム

被告:医療機関、製造業者     原告:患者

事故概要
上肢用プレートシステムに製造上及び警告上の欠陥があることなどを理由とする,上肢用プレートシステムの製造会社等に対する損害賠償請求。

原告側主張
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被告側抗弁
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判決の結論
製造会社等に対する損害賠償請求が棄却された。

裁判所
【裁判所】神戸地方裁判所

その他
主 文  1  原告の請求をいずれも棄却する。  2  参加人と原告の間において,平成12年10月31日に原告左上腕骨に装着された上肢用プレートシステムの折損に基づく参加人の原告に対する損害賠償債務は存在しないことを確認する。  3  参加人と被告の間において,平成12年10月31日に原告左上腕骨に装着された上肢用プレートシステムの折損に基づく参加人の被告に対する損害賠償債務は存在しないことを確認する。  4  訴訟費用は,甲事件,乙事件,丙事件を通じてこれを4分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1  請求 (甲事件における原告の被告に対する請求) 被告は,原告に対し,378万3806円及びこれに対する平成13年6月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (乙事件における参加人の原告に対する請求) 主文2項同旨 (乙事件における参加人の被告に対する請求) 主文3項同旨 (丙事件における原告の参加人に対する請求) 参加人は,原告に対し,378万3806円及びこれに対する平成14年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2  事案の概要 甲事件は,原告が被告に対し,原告が左上腕骨の骨折部分に装着した被告製作のプレートが破損したことについて,製造物責任法に基づく損害賠償請求とこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める事案である。 乙事件は,参加人が,原告との間において,上記プレートの破損について損害賠償債務がないことの確認を求めるとともに,被告との間においても,同プレートの破損について損害賠償債務がないことの確認を求める事案である。 丙事件は,原告が参加人に対し,上記プレートの破損について診療契約の債務不履行に基づく損害賠償請求とこれに対する反訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める事案である。 1  争いのない事実(なお,以下,年度について記載がない場合はいずれも平成12年である) (1)  当事者 被告は,医療関連商品の製造及び販売等を目的とする株式会社である。 参加人は,神戸市a区b町c丁目d番e号においてA病院(以下「参加人病院」という)を開設する医療法人である。 (2)  原告の骨折 原告は,7月17日に自宅階段で転倒し,左腕の上腕骨を骨折した。 そこで,原告は,7月18日から甲病院で,三角巾及びバストバンドによる外固定の方法(皮膚の上から骨折部を固定する方法)で骨折治療を行っていたが,骨癒合が起こらず,偽関節の状態(骨折部がもはや関節のようになってしまい,そのままでは骨が癒合する可能性がない状態)になった。 (3)  手術による本件プレートの埋込 そこで,原告は,国立神戸病院から参加人病院に転院することにし,10月24日,参加人と診療契約を締結の上,参加人病院のB医師の診察を受け,10月30日に参加人病院に入院し,10月31日に手術を受けた。 B医師は,原告の骨折端のすき間(骨欠損部)に骨移植をし,ついで,被告が輸入販売している上肢用プレートシステム(以下「本件プレート」という)を装着して内固定(骨折部を手術的に直接固定する方法)する骨接合手術を施術した(以下「本件手術」という)。 原告は,11月3日に参加人病院を退院した。 (4)  ところが,原告の左腕が動かなくなってきたため,平成13年1月10日,参加人病院においてB医師が診察したところ,本件プレートが破損していることが判明した。 本件プレートは,中央部付近において真っ二つに折損していた。 2  争点 (1)  原告の主張 ア  被告の責任 (ア)  製造上の欠陥 原告は,本件手術後,本件プレートを,通常の生活及びリハビリで使用していた。もっとも,本件手術後,腕を動かすと痛かったので,最も大きな運動はリハビリであった。原告がわざわざ特別な有形力を行使したことはない。 本件プレートには「巣」(金属材料の塊の中にある空洞)が存在し,材料の内部にはアパタイトや非金属介在物が存在しており,鋳造時に何らかの異常が発生した可能性が高い。そのため,金属疲労が発生しやすかったものである。骨癒合には通常9ないし10週間を要するにもかかわらず,本件プレートはその半分にも満たない期間で完全に破損したのであって,通常有すべき強度を欠いた欠陥粗悪製品であった。 本件プレートと同じ製品の不具合報告が3年間にこの1件だけであるということも,本件プレートに欠陥があり,異常に早く破損したことを窺わせるものである。 以上の次第で,本件プレートには製造上の欠陥がある。 (イ)  警告上の欠陥 被告は,原告に対し,本件プレートがどのような場合に破損するかについて何ら情報を提供していない。被告は,担当医に情報を提供したと反論するが,担当医が原告に十分な情報を提供していない以上,反論にならない。本件プレートの注意書には,インプラントの機能の限界について患者に文書で詳しい指示を与えて下さいと記載されているが,現に参加人病院のB医師は原告に対して文書による指示をしていないのであって,真に文書による指示が必要であれば,被告としては,おざなりの注意書で済ませるのではなく,別途,患者用の文書を作成すべきであるのに,被告はこれを怠った。 また,被告は,参加人病院においてリハビリを担当していた理学療法士に対しても十分な情報を与えなかった。 したがって,本件プレートには警告上の欠陥がある。 イ  参加人の責任 原告は,長期にわたり骨折部分に骨癒合が生じておらず,高齢で,糖尿病患者でもあったのであるから,骨癒合には時間がかかることが予想された。ところが,参加人病院のB医師は,これらの事実を十分検討せず,安易に本件プレートの使用を決定した。 仮に,原告に骨癒合が生じにくかったのであるならば,B医師としてはその可能性を手術前に説明すべきであった。 また,本件プレートの注意書には,インプラントの機能の限界について文書で詳しい指示を与えて下さいと記載されているのに,B医師は原告に対してそのような指示を文書で与えなかったのみならず,口頭においても,プレートの強度について十分な説明をなさず,三角巾の使用期間についても説明しなかった。 さらに,術後の処置は最も重要であるのに,B医師はこれをリハビリ担当の理学療法士に任せきりにした。また,その理学療法士は本件プレートの注意事項を見たこともなく,その結果,リハビリを漫然と進め,本件プレートを破損させた。 加えて,上記のとおり,原告の場合,骨癒合が生じにくく,骨癒合には時間がかかる可能性があったのであるから,上腕の外固定の方法としては,より固定度の高い,バストバンド等の装具による方法によるべきであったのに,B医師は三角巾を使用した。 のみならず,B医師は,原告について,他病院に対する紹介書を書いたので,もはや原告は参加人病院には来院はしていないと考えて,術後の指導を放棄し,その結果,レントゲン等によって骨癒合の状態を観察することを怠り,本件プレートの破損を見逃した。 以上の参加人の作為・不作為は,適切な治療をするという原告と参加人間の医療契約の不完全履行であって,参加人は債務不履行責任を負う。 ウ  被告の製品の欠陥と警告の欠陥の結果,参加人の認識不足と術後の指導に責任が生じ,相乗的に本件事故が発生したのであるから,被告らの責任は免れない。 エ  損害 本件事故により原告の被った損害は,以下のとおり,合計378万3806円である。 (ア)  原告は,本件プレートが破損したことによって,乙病院において,本件プレートを撤去し,再度上腕骨折部を接合する手術をすることを要し,これにより,以下のとおり,合計378万3806円の損害を被った。 a  入院中の差額ベッド代22万4780円 b  雑費3万7700円 1日1300円×入院期間29日 c  原告妻の付添費17万4000円 1日6000円×入院期間29日 d  交通費4万円 原告妻の交通費が1日1200円の30日間分で3万6000円であり,原告本人も往復に4000円の交通費を要した。 e  医師への謝礼2万円 (イ)  休業損98万7326円 原告は清算会社の清算人として,事務所に出勤して清算業務を行っているが,清算人であるため給与の証明がない。そこで,原告の年齢60歳の平均賃金は月収41万7200円であるから,これを30日で割ると,1日当たりの賃金は1万3906円となる。 原告は,本件プレートが破損した平成13年1月10日から同年3月21日まで,乙病院において,手術,リハビリのために,平均週2回,合計71日通院した。 したがって,原告の休業損は,1万3906円×71日=98万7326円である。 (ウ)  慰謝料200万円 本件プレートの破損の結果,原告は,本件プレートの撤去及び上腕骨の補強のために再手術を余儀なくされて,時間と費用と苦痛を伴い,術後の治療にも長時間を要し,1回目の手術より機能回復の程度も低下して,顔を両手で洗える程度までしか回復しない可能性がある。原告の精神的苦痛を金銭に換算すると,2度目の手術に関する70万円,機能回復が困難であることに関する100万円,その他30万円の合計200万円が相当である。 (エ)  弁護士費用30万円 原告が訴訟代理人弁護士に本訴追行を委任したことに対する弁護士費用30万円は被告らの責任と相当因果関係がある損害である。 (2)  被告の認否反論 ア  製造物責任法2条2項の「欠陥」があったことは否認する。 (ア)  製造上の欠陥について プレートは,あくまで,骨癒合を促進するための補助具であって,骨格自体の代替物になるものではない。 あまりにも強力なプレートを使用した場合,逆に,生理的,力学的ストレスがかからないため,仮骨形成骨を減少させ,骨折端の造形を阻害し,骨折部の緻密化を損ない,骨強化が起こらず,抜釘後に再骨折を起こすことがある。よって,プレートの素材,厚み,サイズ,剛性などは単にプレートの強度という観点のみから決められるものではなく,バランスがとれている必要があり,プレートの強度には一定の限界がある。 したがって,完全な骨癒合が生じるまでは,三角巾などの適切な支持用具を使用させ,運動を制限する等の措置を講ずる必要がある。骨癒合が不十分なまま,十分な外固定を施さずにしておくと,プレートに過度の応力が反復的にかかり,金属疲労によってプレートが破損する可能性がある。 原告は,既に偽関節の状態にあり,比較的高齢で,かつ,糖尿病という遷延治癒の因子を有していたのであるから,骨癒合が生じにくい状態にあった。ところが,原告は,医師から指示された患部の固定の指示に従わず,プレートによる固定を過信して,三角巾を外したのみならず,自動車の運転のほか日常生活に必要な一切の動作を健常者と同じように行っていた。その結果,本件プレートに度重なる過度の応力がかかり,金属疲労によって破損したものである。 本件プレートについて被告が依頼した私的鑑定の結果によっても,何度も繰り返される応力による金属疲労が原因で破損したことが判明している。 以上の次第で,本件プレートの破損は,原告が本件プレートの使用法に違反した使用を続けたことによって発生したものであるから,製造上の欠陥には当たらない。 (イ)  警告上の欠陥について 原告は,本件プレートの破損の危険性について被告が原告に情報を提供していないことをもって,警告上の欠陥があったと主張する。 しかしながら,本件プレートは,骨癒合を促進するために手術によって装着される医療用具であって,医師の高度の専門的知識に基づいて使用されるものであること,一般の薬局では販売されておらず,特定の病院などの専門医療機関に対してのみ販売される製品であることに照らせば,本件プレートを使用処方する医師に対して十分な使用上の注意,警告を与えれば足りる。 そして,被告は,かかる観点から,本件プレートを医療機関に販売するに際し,手術を行う医師向けのパンフレットを添付し,本件プレートの使用目的(骨格自体の代替物ではなく,人体の自然治癒力を促進するためのものであること),使用法(完全な骨癒合が生じるまでは患者に適切な支持用具を使用させ運動を制限してプレートへの応力を避けること),注意点(完全な骨癒合が生じるまで固定を施さないでおくと,プレートに過度の応力が反復的にかかり,金属疲労によりプレートの彎曲や破損が生じるおそれがあること)を書面で十分に警告している。 イ  原告の損害については知らない。 ウ  なお,被告は,参加人の被告に対する請求(参加人と被告の間において,参加人に本件事故について損害賠償債務がないことの確認請求)については明らかに争わない。 (3)  参加人の認否反論 ア  原告の主張は否認する。 原告は,B医師が三角巾の固定期間について説明しなかったと主張するが,B医師は,本件手術翌日の11月1日には,原告に対し,三角巾固定の意義を説明し,当面の間三角巾固定を続けるように指示した。 また,原告は,参加人がリハビリを漫然と進めて本件プレートを破損させたと主張するが,参加人は,専門家の理学療法士を一人付けて,他動運動(理学療法士が患者の腕を動かす運動)から始めて,本人の反応を確かめ,訴えを聞きながら,段階を踏んで慎重にリハビリを行っていたのであって,かかるリハビリの最中に本件プレートが折れることはあり得ない。 さらに,原告は,B医師が,骨癒合の状態をレントゲンを撮るなどして観察することを怠ったと主張するが,参加人は,原告の退院後も,11月4日,8日,14日と診察し,14日にはレントゲン撮影も行い,特に異常がないことを確認している。もっとも,その後,平成13年1月10日まで原告を診断していないが,それは,原告の方から,参加人病院への通院は時間的に難しく,近くの医師を紹介してほしいという依頼をしてきたため,B医師が,11月21日,診療情報提供書(紹介状)を作成して外来受付窓口に預け,以後,原告はこの紹介状をもって他病院に転院したと考えていたからである。ところが,原告は,結局,転院しないまま,参加人病院にリハビリのためだけに通院していた。原告が自ら「実は転院しませんでした。リハビリに来ています。診察して下さい」と言えば済むことなのに,原告はこれをしなかったのである。 むしろ,原告は,参加人病院に来院する前に通院していた甲病院においても,参加人病院においても,その後に通院した乙病院においても,骨折部位の安静を指示されていたにもかかわらず,これに従わず,健常人と同様の日常生活をしていた疑いがある。 イ  原告の損害については知らない。 また,そもそも,原告は,元々骨癒合が生じにくい体質,病質だったのであり,乙病院における再手術によっても結局骨癒合が生じていないのであるから,再手術は無意味であったのであり,そうすると,再手術に伴う費用は損害とはいえないし,相当因果関係もない。 ウ  結論 よって,本件プレートの破損について参加人には何ら過失がないのであるから,参加人は,原告との間で本件プレートの折損について損害賠償債務がないことの確認を求めると共に,被告との間でも,本件プレートの折損について損害賠償債務がないことの確認を求める。 第3  争点に対する判断 1  初めに,原告の本件手術前後の状況について認定する。 (1)  証拠(甲7,丙1ないし12,証人B,証人C,原告本人及び以下に個別に掲げるもの〔ただし,甲7及び原告本人については以下の認定に反する部分を除く〕)及び争いのない事実によれば以下の事実が認められる。 原告は,本件骨折の7,8年前から糖尿病の持病があり,定期的に人工透析を受けていた。 原告は,7月17日夜間,自宅において,低血糖が原因でめまいを起こして階段で転倒し,左腕の上腕骨を骨折したため,翌18日午前3時30分,甲病院で救急診療を受け,左上腕骨骨頭下骨折の診断を受けた。甲病院の医師は,外固定で様子を見ながら,骨癒合が生じるのを待つ保存療法によることを決め,原告の骨折部位を三角巾及びバストバンドで固定した。原告は,10月10日までの間,2,3週間に1回程度,甲病院に通院を続けた。原告はしばしばバストバンドや三角巾を外したため,医師から注意を受けた(丙10)。原告の骨折部位は骨癒合せず,偽関節の状態になってしまった(丙5の1ないし3)。 原告は,別の医師から,もっと大きな病院で手術をした方がいいと勧められたため,参加人病院に転院することにし,10月24日,参加人病院に赴き,B医師の診察を受けた。B医師は,左上腕骨外科頚骨折偽関節の診断をした。B医師は,甲病院が3か月以上保存療法を施しても骨癒合が生じなかった以上,骨の欠損部に骨移植を施した上でプレートで内固定し,骨癒合を促進すべきであると考え,観血手術及び骨移植を伴う内固定(観血的整復固定術)が必要かつ適応であると診断した。そこで,B医師は,原告に対し,手術の内容を説明するとともに,糖尿病の場合,感染の危険性が高いこと,一度偽関節になってしまった場合,骨移植をしても再度偽関節になる可能性があること,手術後,骨癒合が生じても肩の動きは従前より悪くなる可能性があること等の手術のリスクを説明し,原告の同意を得たので,10月31日に手術を実施することにした。そこで原告は,10月30日に参加人病院に入院した。 10月31日,B医師は,患部を切開し,骨折部に詰まった軟部組織を除去してできたすき間に,原告の骨盤の腸骨から切り取った骨を移植した上で,骨折部に本件プレートをあてがい,ねじ8本で本件プレートを上腕骨に固定する本件手術を実施した(丙6)。 B医師は原告に対し,骨癒合が生じるまで当分の間,三角巾で左腕を固定するように指示した。ところが,原告は,入院期間中何度か三角巾を外したため,看護師から注意と説明を受けた(丙2の27ないし29頁)。 B医師は,原告の退院後のリハビリについては,週に2,3回通院してリハビリを行い,肩の動きの改善を図るとともに時期を見て筋力トレーニング等を行うという方針を立て,参加人病院内のリハビリ担当の理学療法士にその旨文書で指示した(丙2の17頁,丙4の2ないし4頁)。 原告は,11月3日に参加人病院を退院し,以後,B医師の立てたリハビリの方針に従い,B医師の診察を受けながら,参加人病院においてリハビリを続けることになり,11月4日,8日,14日の3回,B医師の診察を受け(丙1の4ないし7頁),14日にはレントゲンの撮影も行った(丙7の1ないし3)。また,参加人病院において,週に2,3回程度,理学療法士の指導の下,1回20分程度のリハビリを行った(丙4,証人C)。 しかしながら,原告は,退院早々に三角巾による固定を外してしまい,以後,勤務先や参加人病院などへ移動するのに自ら車を運転したり,勤務先でパソコンのキーボードを叩いたり,その他,洗顔,ドライヤーの使用など日常生活に必要な動作全般を左腕を使って行った(原告本人)。 原告は,人工透析のために他の病院へも週に3回通院しなければならず,参加人病院への通院時間が確保できないので,近所の病院に転院しようと考え,B医師にその旨述べて他病院への紹介状の作成を依頼した。そこで,B医師は,11月21日,原告に対する診断名と手術内容,術後の経過を記した紹介状(丙1の27頁)を作成し,これを,原告が受け取りに来た時に交付できるように参加人病院の外来受付に渡した。原告が11月14日の受診を最後に全く受診に来なくなったので,B医師は原告が他病院に転院したものと考えていた。 ところが,原告は,格段の理由もなく他の病院への転院を取りやめ,かといってB医師の診察を受けることのないまま,参加人病院においてリハビリのみを週2,3回のペースで継続した(丙4)。 この間,原告は,相変わらず,三角巾は外したまま,日常生活に必要な動作全般を左腕を使って行っていた(原告本人)。 原告は,12月20日ころから,左肩にカクカク音がするようになり,平成13年1月7日ころには,左腕を上げることが困難になってきたため,同月10日,参加人病院に赴いてB医師の診察を受け,レントゲンで撮影したところ,本件プレートが中央部付近で真っ二つに破損していることが判明した(丙8の1ないし3)。 B医師は,本件プレートを摘出して,再度骨移植し,別のプレートないし髄内釘で固定する手術を検討したが,その後,原告から,本件プレートについてPL法訴訟を提起するつもりであると告げられ,その後,原告との関係が悪化したため,手術の予定を取りやめた。 原告は,平成13年2月乙病院に転院し,同月24日,本件プレートの摘出手術を受けた(丙11,12)。 その後,原告は,平成14年4月23日に丙病院に転院したが,結局,現在に至るも本件骨折部位の骨癒合は生じていない(丙13,原告本人)。 (2)  以上の認定に反して,原告はB医師から本件プレートを用いること等,本件手術の内容について説明を受けたことはないと述べる。 しかしながら,B医師は,原告に対して本件手術の内容方法について説明した旨証言していること,B医師作成のカルテの10月24日欄(丙1の3頁)には「観血的整復固定術+骨移植」と記され,また,手術のリスクに関する,感染,出血,偽関節,可動域制限が問題という趣旨の記載もあって,かかるカルテの記載からすれば,手術の内容,方法についてB医師が原告に説明しなかったとは考えられないこと,原告自身,手術後,本件プレートが写ったレントゲン写真を見せてもらったことについては認めていることなどを総合すると,B医師は原告に対して本件手術の内容方法や本件プレートを使用することについては説明をしたものと認めることができ,かかる認定に反する原告の供述は信用できない。 また,原告は,B医師から三角巾固定の必要性を指示説明されたことはない旨述べる。 しかしながら,B医師は三角巾固定を指示説明した旨証言すること,原告の入院期間中における参加人病院の経過記録等(丙2の27ないし29頁)には,11月1日午前8時35分欄に「三角巾固定する。固定続けることを促す。納得している様子はみられる。固定中」,翌2日午前7時欄に「三角巾固定はずしている。三角巾固定説明する」,同日午前10時欄に「三角巾固定し直す」という記載があることに照らすと,原告は,入院期間中にB医師及び看護師から,三角巾固定を指示されるとともにその理由と必要性について説明も受けた事実が認められるから,原告の供述を信用することはできない。 さらに,原告は,少なくとも左腕の痛みがとれた最初の数回のリハビリのころまでは左腕は動かさずにいたと述べる。 しかしながら,上記経過記録(丙2の27ないし29頁)によれば,原告は本件手術後,11月3日の退院時までの間,左腕については痛みを訴えず,もっぱら,移植用の骨を取り出した腸骨部分が痛いと訴え続けていたことが認められること,手術後に原告を診察したB医師のカルテにも,骨盤から腿部にかけての痛みがあるという記載しかないこと,理学療法士の記載したカルテ(丙4の5ないし8頁)にも,11月4日欄に「移植骨採取部のPain(痛み)」とか,11月14日欄に「右の骨盤が痛い」などと記載されていることを総合すると,原告は,本件手術後,左腕に格別痛みはなかったと認められる。以上の事実に,原告が,上記のとおり,B医師から三角巾による固定を指示説明されたことはないと主張していること,原告は本件訴訟の当初,本件プレートにより骨折部分の通常の使用は可能であると主張していたこと,前記認定のとおり,原告が入院中から何度か三角巾を外していたことを総合すると,原告は,参加人病院から退院すると早々に三角巾を外して左腕を日常生活に使用し始めたと認定することができる。原告の上記供述は信用できない。 2  上記の認定事実を前提に,被告の責任について検討する。 (1)  製造上の欠陥について ア  本件プレートについて (ア)  本件プレートの目的 証拠(乙1,2の2,8ないし15,証人B)及び弁論の全趣旨によれば,本件プレートは,人体の自然な治癒力によって骨癒合が生じるまでの間,骨折部分を固定することを目的とするものであって,骨格の代替機能を務めるものではないことが認められる。 (イ)  本件プレートに要求される強度 そして,証拠(乙6の2の1,乙8ないし15,証人B)によれば,プレートがあまりにも強固過ぎる場合,骨折部分にストレスがかからないために仮骨形成を減少させ,骨折端の造形を阻害し,骨折部の緻密化を遅延させることになり,かえって,骨癒合の促進を妨げるため,骨癒合の促進というプレートの目的を達成するためには,プレートにはある程度弾力がある方がいいこと,したがって,プレートの強度には自ずから一定の限界があることが認められる。 (ウ)  本件プレートの使用方法 したがって,証拠(乙1,2の2,証人B)及び弁論の全趣旨によれば,上記のようなプレートの強度の限界上,骨癒合が生じるまでの間は,三角巾等の適切な外装具で患部を固定して活動を制限し,安静にする必要があることが認められる。 イ  原告に装着された本件プレートが,要求される強度を満たすものであったか 原告は,プレートの強度に上記のような一定の限界があるとはいっても,原告が使用していた本件プレートは,その意味での強度にすら達していなかったため早期に破損したと主張する。 たしかに,D作成の意見書(甲14)には,破損した本件プレートの破断面を走査型電子顕微鏡及びX線マイクロアナライザーで観察したところ,材料の内部にアパタイトや非金属介在物(ケイ素,マグネシウム)の存在が認められる旨,これらの物質が,鋳造時の湯流れ不良又は鋳型からの剥離によって溶湯中に混入したことによる不定形状の鋳造欠陥が材料中に初めから存在していたと考えざるを得ない旨,鋳造欠陥である巣が認められる旨,上記物質又は巣が応力集中源となって金属疲労を生じた可能性がある旨の記載がある。また,同人は,供述録取書(甲17)の中でも,本件プレートには巣の存在が認められ,ここに集中的に応力がかかった結果,金属疲労が早期に発生した可能性があると述べる。 しかしながら,上記意見書及び陳述録取書によれば,上記意見は本件プレートを骨格の代替物と誤解していることが認められる。また,本件プレートは鋳造品(鋳型に材料を流し込んで作成するもの)ではなく,鍛造品(素材を打撃,加圧して作成するもの)であること(甲17,乙27,28の2),アパタイトは骨とインプラントを同化させるためのものであって(甲14),骨癒合完了後に体内から除去することが予定されている本件プレートにアパタイトは使用されているとは考えられないこと(乙27,28の1・2),ケイ素やマグネシウムは,本件プレートの表面に特殊な処理を行った際に付着したものである可能性があり,そうであれば,これらの物質が発見されたからといって,これらの物質が本件プレートの内部に存在したとは限らないこと(乙27),上記意見書が指摘する巣は,本件プレートの破損面そのものではなく,それとは別に検査のために切断した面に存したものであって(乙32),このことからすると,必ずしも巣の存在が本件プレートの強度を弱化させたとはいえないことが認められ,これらの事実に照らすと,上記意見書及び供述録取書を全面的に信用することはできないから,本件プレートの強度に問題があったと直ちに認定することはできない。 ウ  原告の使用方法 前記のとおり,本件プレートは,骨癒合を促進するための補助具であり,骨癒合が生じるまでの間,患部を三角巾等で固定して安静にしていることを要するにもかかわらず,前記認定のとおり,原告は退院後すぐに三角巾を外し,車の運転,パソコンのキーボード操作,ドライヤーの使用,洗顔などの日常生活を送っていたことが認められるのであって,原告は,本件プレートをその通常の使用法に従って使用していたと認めることはできない。 エ  結論 そうすると,本件プレートが,要求される程度の強度を欠くものであったとは直ちに認められない上に,原告の本件プレートの使用方法は,当該製造物の「通常予見される使用形態」(製造物責任法2条2項)に従ったものではなかったと認められる。 そして,原告の骨折部分は偽関節状態になっていたのであるから,本件手術によって骨折部分に骨移植がされたとはいうものの,骨癒合が生じるまでは,骨折部分は本件プレートのみによって支えられている状態であって,左腕を固定せずに日常生活に必要な動作を行った場合,本件プレートに過度の応力がかかることは容易に推認することができる。そして,原告が,参加人病院を退院した11月3日以降,かような過度の応力を日常的,継続的に本件プレートにかけ続けた結果,本件プレートが金属疲労を起こし,平成13年1月10日ころ遂に折損した可能性が高いと認められる。 以上の認定事実を総合すれば,本件プレートの製造上「通常有すべき安全性を欠いている」(製造物責任法2条2項)とは認められないから,本件プレートに製造上の欠陥があったと認めることはできない。 (2)  警告上の欠陥について ア  原告は,被告が,本件プレートがいかなる場合に破損するかという情報を原告に提供せず,患者用に交付すべき文書も作成していないことをもって,本件プレートには警告上の欠陥があると主張する。 しかしながら,本件プレートは,外科的手術によって骨折部位に直接装着して使用することが予定されている医療用具であって,医師の高度の専門的知識に基づいて処方されるものであり,一般の薬局での販売が予定されているものではないと認められるから,医師に対して,必要な使用上の注意,警告を与えれば十分であると認められる。 そして,本件プレートの使用方法,使用上の注意点などについて,医師が患者に対し,いかなる事実をいかなる方法で説明するかは,患者の性質,医師と患者の関係,当該骨折の部位・程度等に応じて,医師の裁量に委ねられるべきものと考えられるから,製造業者である被告が患者に直接交付すべき警告文書を作成しなかったからといって,警告上の欠陥に当たると認めることはできない。 イ  そこで,次に,被告が,かかる観点から十分な注意,警告を医師に対して与えているかを検討する。 証拠(乙1)によれば,本件プレートには「担当医の方々へ-医療上の重要事項(警告及び注意)部分荷重・非荷重用整形外科インプラントの使用上の注意」と題する説明書が添付されていること,同パンフレットには以下の記載があることが認められる。 「金属製の外科用インプラントは,骨固定の一手段として一般的に骨折治療や再建手術に使用されています。これらのインプラントは,人体の自然な治癒力を促進するためのものであり,骨格自体に取って替わるものではなく,治癒が不完全の場合に体重を支えるためのものでもありません。遷延治癒や偽関節の患者に荷重を行うと,金属疲労によるインプラントの破壊を招く可能性があります。いかなる金属製外科用インプラントであろうとも,使用中に受ける反復的な応力による金属疲労にさらされています。」 「部分荷重・非荷重用の装具(プロテーゼ以外の整形外科用装具)の使用に際しては,下記の事項にご注意下さい。 1  部分荷重・非荷重用のインプラントはそれにかかる,全く他の支えに頼らない全荷重に耐える目的で作られてはいません。完全な骨癒合が得られるまでは患者に適切な支持用具を使用させ,運動を制限してインプラントへかかる応力を避け,骨折部の動きで治癒を遷延させないようにして下さい。 遷延治癒や偽関節に固定を施さないでおくと,骨折が治癒する前に身体からインプラントに対し,過度の応力が反復的にかかってきます。このような応力がインプラントの金属疲労を生じ,結果として彎曲や破損が起きることがあります。つまり,骨の完全な癒合が確認(臨床診断とx線撮影による)されるまで,骨折部の固定をしっかりと維持することが重要になります。 注意  術後のケアは極めて重要です。医師の指示に従わなかったためインプラントが破損する可能性,またその場合には破損したインプラントを抜去するための再手術が必要になることを患者に伝えて下さい。」 (2ないし7項については引用を省略する) 2  患者にはインプラントの使用とその機能の限界について,文書で詳しい指示を与えてください。骨折の癒合前に部分荷重が奨励される,または必要な場合は,荷重や筋肉の動きによりインプラントの変形や破損が起こり得ることを十分にご説明ください。活動的な患者,または身体が衰弱していたり,痴呆の患者で免荷用具を適切に使用出来ない場合は,術後のリハビリテーション期間中,特に危険が伴います。」 以上の記載内容に照らすと,上記パンフレットは,本件プレートの使用目的,使用方法,使用上の注意,使用上の注意を守らなかった場合の危険性について,本件プレートを処方する医師に過不足なく情報を提供するものであって,警告としては必要十分なものであると認めることができる。 ウ  以上の次第で,本件プレートの警告上,「通常有すべき安全性」を欠いているとは認められないから,本件プレートに警告上の欠陥があると認めることはできない。 なお,原告は,リハビリ担当の理学療法士に十分な情報を与えなかったことも警告上の欠陥であると主張する。しかしながら,メーカーである被告としては,商品に必要な情報を記載したパンフレットを添付する以上に,かかる情報を,医療機関の内部の個別の医療従事者に直接告知することまで行うのは事実上不可能であるから,被告としては,商品を購入した医療機関がそれとわかるような方法で商品にパンフレットを添付し,その中に,必要かつ十分な使用上の注意,警告を記載すれば足りると解すべきである。 (3)  よって,原告の被告に対する請求は理由がない。 3  次に,参加人の責任について検討する。 (1)  本件手術前の説明義務違反について 原告は,手術前にB医師が原告に対し,骨癒合が生じにくい可能性を説明しなかったことが過失であると主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,B医師は,原告に対し,本件手術のリスクについて説明した際に,一度偽関節になった場合,骨癒合が生じにくく,再度偽関節になる可能性があることを説明していることが認められる。 よって,原告の説明義務違反の主張は理由がない。 (2)  施術方法の選択義務違反について 原告は,原告の場合,長期にわたり骨折部分に骨癒合が生じておらず,高齢で,糖尿病患者でもあったのであるから,骨癒合には時間がかかることが予想されたのに,参加人病院のB医師は,これらの事実を十分検討せず,安易に本件プレートの使用を決定したこと,また,上腕固定の方法としては,より固定度の高い,バストバンド等の装具によるべきであったのに,三角巾を使用したことが過失であると主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,原告の場合,国立神戸病院において,7月18日から10月10日ころまで約3か月間,三角巾及びバストバンドにより骨折部位を外固定して骨癒合を待つ保存療法を試みたにもかかわらず骨癒合が生じなかったのであって,かかる経緯に鑑みれば,次に,骨移植を行った上で,より強力な固定力が得られる本件プレートによる内固定の方法を試みることは,施術の選択として合理性があると認められる。そうすると,B医師が本件プレートの使用を選択したことをもって,医師の施術選択の誤りであると認めることはできない。また,上腕固定の方法として三角巾を使用したことについては,証人Bの証言によれば,あまり強力な方法で上腕を固定してしまうとかえって筋肉を萎縮させるなどの弊害があることが認められるし,そもそも,前記認定のとおり,原告が,B医師や看護師の指示に従わず,三角巾を自ら外して左腕を動かして日常生活を送ったことが本件プレートが破損した大きな要因であると認められるから,バストバンド等の装具で上腕固定をしなかったことが施術選択の誤りであると認めることもできない。 (3)  本件手術後の説明義務違反について 原告は,本件プレートの注意書(乙1)に,インプラントの機能の限界について患者に文書で詳しい指示を与えるように記載されているのに,B医師が原告に対して文書で指示を与えなかったのみならず,口頭においても,プレートの強度について十分な説明をなさず,三角巾の使用期間についても説明しなかったことをもって,説明不十分の過失があると主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,B医師は原告に対し,本件手術の内容方法と,手術後,三角巾による固定を続ける必要があることを指示説明しているのであって,原告が株式会社の清算人を務める社会人であり(乙26,原告本人),本件手術当時59歳であって医師の説明が理解できないおそれがあるほどの高齢者でもないこと,参加人病院においては,B医師以外に,看護師も何度か三角巾による固定を指示説明していることに照らすと,患者に対する指示説明としては十分であって,文書で指示をしなかったことをもって説明不十分の過失があると認定することはできない。 また,仮にプレートの強度そのものについては説明しなかったとしても,最も重要な事実である三角巾による固定の指示自体は繰り返し行っている以上,これをもって説明不十分と認めることはできない。 さらに,証人Bの証言によれば,原告の場合,本件手術を行っても,骨癒合が生じず,再度偽関節となるおそれがあることが認められる。このことからすると,原告の骨癒合が生じる時期を予め予測することは困難であったと認められるから,三角巾による固定期間を明示しなかったことが説明不十分であるとも認められない。 (4)  術後の措置に関する懈怠について 原告は,B医師が,最も重要である術後の処置を,リハビリ担当の理学療法士に任せきりにしたこと,その理学療法士が本件プレートの注意書を見もしないままにリハビリを漫然と進め,本件プレートを破損させたこと,B医師が,原告が他の病院に転院したと考えて術後の指導を放棄し,レントゲンなどにより骨癒合の状態を観察することを怠り,本件プレートの破損を見逃したことが過失に当たると主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,B医師は,リハビリ担当の理学療法士宛に指示書を交付して,術後の処置を指示しながら,レントゲン撮影などによって原告の診察を続けていたところが,原告から「転院したいので紹介状を書いてほしい」と求められたので,11月21日,他の病院に対する紹介状(丙1の27頁)を書いて外来受付に交付し,以後,原告は他の病院に転院したものと考えていたこと,ところが,原告は,その後,B医師の診察を受けないまま,参加人病院においてリハビリだけを受け続けていたことが認められる。かかる経緯に鑑みると,B医師が,術後の処置をリハビリ担当の理学療法士に任せきりにしていたともいえないし,理学療法士はB医師の指示に基づいてリハビリを行っていたのであるから,リハビリを漫然と進めていたとも認めることはできない。また,原告が自らB医師に対して転院したい旨告げて紹介状の作成まで求め,以後,診察を受けに来なくなったのであるから,B医師が原告は転院したものと考えて,診察及び指導を中止したのはやむを得ない措置というべきであって,これをもってB医師の過失と認めることはできない。 むしろ,原告が,B医師に対して転院すると言いながら,他の病院における診察も受けないまま,参加人病院におけるリハビリだけを続けてB医師の診察を勝手に中断したこと,また,B医師の指示を無視して三角巾を外し,左腕を日常生活に使い続けたことが問題というべきである。 (5)  以上の次第で,原告の主張する参加人の過失はいずれも認めることはできない。 そうすると,参加人の,原告との間の診療契約の債務不履行を認めることはできないから,原告の参加人に対する請求は理由がない。 また,そうである以上,参加人の原告に対する債務不存在確認請求は理由がある。 4  最後に,参加人の被告に対する債務不存在確認請求について検討する。 前記認定のとおり,参加人病院のB医師及び看護師は,原告に対して,三角巾による固定の必要性を指示説明しており,参加人は,被告が本件プレートに添付した注意書に従った指示説明を患者である原告に対して行ったことが認められる。ところが,原告が指示説明に従わず,左腕を日常生活に使い続けたことによって,本件プレートが金属疲労を起こして破損した可能性が高い。 以上の事実に,被告が参加人の債務不存在確認請求を明らかに争わないことを併せ考えれば,本件プレートの破損について,被告の参加人に対する損害賠償請求権を認めることはできない。 よって,参加人の被告に対する債務不存在確認請求には理由がある。 5  結論 よって,原告の請求はいずれも理由がないので棄却し,参加人の請求はいずれも理由があるので認容する。

判決年:2003     国:日本


掲載日

調査年 2007年


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