ニーズDB:医師インタビュー
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松前 光紀 先生
東海大学医学部付属病院
脳神経外科 教授・診療科長
脳神経外科

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1.ご専門の分野について

専門分野は脳神経外科である。専門とする主な疾患・部位は、脳腫瘍である。

実施頻度の高い手技は、開頭腫瘍摘出である。
脳神経外科全体の手術実施件数は年間500件程度である。脳腫瘍手術の手術件数は年間60~70症例である。血管内手術については年間170~180症例である。東海大学医学部付属病院は高度救命センターを併設しているため、他の大学病院と比べて、外傷患者数の割合が多い。


2.ご専門分野に関わる既存の医療機器について

■この10年で、診療成績の向上や患者QOLの向上におおいに貢献したと考えられる医療機器

(1)診断技術
① MRI
この10年で、MRIは解像度とスピード、撮影できる画像の種類などが増え、格段に進歩した。これまでは形態画像しか撮影できなかったが、最近は、ものの流れ、温度などが描出された機能画像(MR-S など)が撮影できるようになった。
② CT
CTは、MRに比べると、今後の可能性や画像の種類などの幅が少ないと感じる。高速での撮像、様々な3次元合成が出来るといった点では進歩した。海外メーカーの製品の進歩が著しい。
(2)治療技術
脳卒中は、CTとMRIと血管撮影の脳卒中の三大診断機器と治療機器が、全部そろっていますので、かなり迅速に診断が出来ます。
① 手術顕微鏡
手術顕微鏡については、あまり大幅な変化は見られなかった。
② 内視鏡
内視鏡は小型化が進んだ。技術的には、この10年の目覚ましい進歩は見られなかった。


■既存の医療機器の改良すべき点について

既存の医療機器で改良すべき点については、特に思い当たらない。


3.実現が望まれる新規の医療機器について

(1)「放射線診断・治療」「手術」複合システム
東海大学の「放射線診断・治療」「手術」複合システムMRXO(Magnetic resonance X-ray Operation suite)は、世界的に高く評価されている。診断装置(CT、MRI、血管撮影装置)と手術室などの治療室から構成されている。手術中にも。必要に応じて迅速に検査を行うことができる。治療室には検査と治療(手術)の両方に対応できる治療ベッドがあり、それぞれの検査装置間でベッドを乗り換える必要がない。
GEやシーメンスもMRXOに注目しており、これを真似た施設がオスロ大学やハーバード大学で稼動しはじめる予定である。
(2)再生医療
脳梗塞を起こした後の神経組織の再生など、特に内在性の幹細胞を使った再生医療は、究極の治療方法である。また、パーキンソン病に対する再生医療、脊髄の外傷・損傷の患者に対する再生医療は、近い将来でかなり現実味を帯びてくるだろう。
10年以内には、大学病院、市中病院などで良好な治療成績を挙げられるぐらいの技術が確立されるだろう。
(3)開発の実施状況
東海大学では、フィリップス、戸田建設、瑞穂医科工業の4者の共同でMRXOを開発した。
血管内治療に関する技術を、国内企業と共同開発する予定がある。
(4)開発予定、開発協力意向
医療機器メーカや大学・研究機関等からの問い合わせに応じることは可能である。


4.その他、医療機器の研究動向や今後の医療機器開発の方向性に対するご提言について

(1)国の研究開発におけるメーカとの共同研究について
現在のわが国の研究助成の仕組みでは、臨床家が海外メーカと共同研究するために申請書を提出してもおそらく承認されない。日本の医療機器産業の活性化が前提となり、国内メーカとの共同研究を求められる。しかし、国の研究助成金で日本のメーカと共同研究を進めても、日本のメーカは国外に向けた情報発信を行わないため、海外で全く評価されない。海外の企業と直接連携して開発した方が、よい研究成果が得られ、世界的にも評価されるのが現状である。
一方、海外メーカは連携先の国籍を問わない。例えばフィリップスやシーメンスは、大きな研究成果を挙げるために、連携先として望ましい相手を世界中から集めている。これは会社主導で行われているが、メーカの背後ではオランダ政府やドイツ政府が戦略的に動いている。
米国では、NIHとNASAが連携して遠隔医療技術の開発に取り組んでいる。戦場に医師や看護師を送ることにはリスクがあること、けが人は現地(戦場)で迅速に治療しなければならないことを勘案し、ロボットの遠隔操作による手術を実現しようとしている。
日本も、もっと戦略的に医療機器の研究開発について検討すべきである。また、大きな医療機器を開発したければ、国内だけの体制には限界がある。

(2)医療機器・技術・材料の薬事承認について
日本では、薬事承認に時間がかかりすぎることが問題である。もっと迅速に承認されるしくみをつくらなければ、研究開発をする人の意欲がそがれることになる。
たとえば、日本では心臓のステントはすでに許可されているが、頚動脈に使えるステントはこの4月からの認可である。一方、海外では、日本で使われている製品の3~4世代後のステントがすでに患者に留置されている。
医療機器・技術・材料は、どういったものがあるかが臨床現場に認知され、評価されることによって進歩するものである。海外の学会などではしばしば、日本で未承認の新しい医療機器・材料を知って驚かされる。日本の臨床現場で最新製品が認知されなければ、医療機器開発で世界から大幅な遅れを取ることになる。
特にヨーロッパは、様々な技術で遅れを取っていることの問題意識が高く、国策で薬事承認を非常に早くするために努力している。現在、薬事承認がもっとも迅速なのは欧州である。したがって、MRIの新しい機種は欧州から出てくるだろう。シーメンスとフィリップスが優位性を保っているというのは、こういった点にある。


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