ニーズDB:医師インタビュー
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内田 豊昭 先生
東海大学八王子病院
泌尿器科 教授
泌尿器科

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1.ご専門の分野について

専門は泌尿器科である。
実施頻度の高い手技は前立腺治療である。年間の実施件数は、100~120例である。




2.ご専門分野に関わる既存の医療機器について

■この10年で、診療成績の向上や患者QOLの向上におおいに貢献したと考えられる医療機器

① 治療
a) HIFU
この10年で診療成績の向上等に貢献した医療機器としては、高密度焦点式超音波療法(High-Intensity Focused Ultrasound:HIFU)に使用される「ソナブレード」という機器があげられる。
HIFUは約15年前に登場した治療法である。HIFUは1時間で手術が終わり、その日に帰宅でき、それで治療が完了する。HIFUによる前立腺がんの有効率は80%である。この有効率は全摘手術、放射線治療と同水準である。治癒率が同水準であれば、体の切開を必要としないなど患者の負担の少ない治療法がよい。経済的な治療法であれば医療費削減の観点から、より好ましい。現在、放射線療法は約200万円、全摘手術は約150万円、HIFUは約100万円である。
HIFUの技術レベルを10年前と現在とで比較すると、平均手術時間は約180分(3時間)から68分へと3分の1に短縮した。5年間の有効率は約60%から80%へと20%向上した。これは、機械の進歩と手技の改良によりもたらされた。
HIFUの機械的な側面からみた進歩としては、焦点領域の拡大と1焦点あたり治療時間の短縮があげられる。焦点領域は2×2×10ミリメートルから3×3×12ミリメートルに拡大した。1焦点あたりの治療時間は16秒から6秒に短縮した。1回の前立腺治療では500~1,500個の焦点領域がある。照射部位の温度をモニタするための機能が搭載された。
HIFUを用いた手技を実施するうえでは、照射方法が改良された。均一に照射するのではなく、がんが多い両側の外側を少し強めに照射し、真中を普通に照射するような手技が確立されてきた。また、TCM機能を用いてリアルタイムに照射部位の温度を確認しながら、適切な温度に調整し、がんを残らず治療することができるようになった。


■既存の医療機器の改良すべき点について

① 治療
a) HIFU
既存の機器としてはHIFUが重要である。前立腺がんの症例数は増加してきたが、今後は、乳がん、肝臓がん、腎臓がん、膵がんなどにも、この治療がより安全に応用されていくことが望まれる。こうした疾患には現在、ラジオ波焼灼療法(Radio Frequency Ablation:RFA)が適用されているが、針を刺さずに、外側から超音波で治療するほうが低侵襲である。

b) 放射線治療
将来は強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy:IMRT)が標準的になると思われるが、それでも合併副作用があるので、より高度で安全かつ副作用が少ない治療法の登場が期待される。ただし、放射線治療は、治療期間として1.5~2か月を要し、患者にとって負担である。


3.実現が望まれる新規の医療機器について

医療機器は出尽くしたと感じている。既存の機器について、正確さ、緻密さ、安全性をいかに進歩させるかが重要である。


4.その他、医療機器の研究動向や今後の医療機器開発の方向性に対するご提言について

a) 薬剤療法
長期的な視点では、薬剤療法をさらに追求する必要があるだろう。1度の服用や注射で治療が終わることが理想である。有効率が高く副作用がなく簡単で安いものが求められる。

b) 再生医療
注目すべき次世代のトピックとしては再生医療があげられる。自分自身の細胞から拒絶反応のない臓器や神経を作れるような時代がくれば、それはきわめて有用である。将来可能になる技術ではあると思う。

c) HIFUによるがん治療の保険収載
HIFUが前立腺肥大症に対する治療として保険収載されたのは2008年4月である。保険収載までに15年かかった。前立腺がんに関しては10年前から開始し、3年前には多施設共同研究の結果報告書を提出したが、現在も認められていない。がんの治療の治療器として早く認めてほしい。


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