滝澤 謙治 先生 聖マリアンナ医科大学 放射線科 准教授 放射線科
1.ご専門の分野について 専門は放射線科、Interventional Radiology(IVR)である。 疾患としては、脊椎・骨盤の骨腫瘍や圧迫骨折を対象としている。 頻度の高い手技は、骨セメント療法(年間180症例)、転移性骨腫瘍に対する動注化学療法および動脈塞栓術(年間50~60症例)である。 転移性骨腫瘍の標準的治療法は放射線治療だが、骨内に腫瘍が限局している場合は骨セメント療法も選択される。骨セメント療法は除痛等の即効性が高い。大型の骨転移性腫瘍で外科的に切除困難な症例に対しては動注化学療法および動脈塞栓術が有効である。 骨セメント療法に関してはIsocenter Puncture法(ISOP法)という当院オリジナルの手技を行っている。この方法は医師の熟練によらず正確で短時間に穿刺を行えるため、治療の安全性や有効性を高められる。 2.ご専門分野に関わる既存の医療機器について ■この10年で、診療成績の向上や患者QOLの向上におおいに貢献したと考えられる医療機器 a)診断 i)CT CTは目覚しく進歩した。動脈の血管構造まで3次元画像として再構成されるようになった。腫瘍血管をはじめ解剖学的な把握をしやすくなったことで、治療の適用に関してかなり具体的なシミュレーションを行えるようになった。 ii)MRI MRIは画像解像度やスピードが向上した。しかし、IVRについては、この10年間に限りそれほど大きなインパクトは感じられない。 b)治療 i)骨セメント療法 骨セメント療法が国内である程度行われるようになってきたのは2002年以降で、その後あまり大きな進歩はない。 当施設における進歩としては、2005年に先進医療の認可得て以来症例数が増加したこと、また医師の熟練によらず正確かつ短時間にピンポイントの穿刺を行えるIsocenter Puncture法(ISOP法)という方法を考案したことがあげられる。ISOP法の手順は簡単で、1)回転式透視装置のモニターを確認しながら回転式透視装置の中心点(Isocenter:IC)を骨セメント注入ポイントに重ね合わせる。2)ICと椎弓根の中心とが重なる軸に沿って穿刺を行う。なお、通常の血管造影装置にはIC表示機能は搭載されておらず、当院で特注した機能である。 ii)動脈塞栓術 カテーテルの進歩が大きい。すべりや操作性が向上し、血管を傷つけることなく円滑に挿入できる。特に日本製はすばらしい。最近はカテーテル本体の視認性がよい製品が登場した。カテーテル先端の視認性がよいものは多いが、じつは本体の視認性がよいことも重要である。カテーテル本体が血管内でたわんでいた場合、塞栓術中のアクシデントの要因となる可能性がある。 ■既存の医療機器の改良すべき点について a)治療 i)骨セメント療法用注入針 骨セメント療法のための注入針が求められる。現在は骨生検のための針を使っている。 当院では、独自の骨セメント療法用注入針の開発を進めている。2重管構造で外管に多側孔を備えた針である。外管で引圧をかけて内管から注入する。過度の加圧をしないことで骨の外にセメントが漏れ出す危険が減少する。もう一つの利点として、現在行われている手技に、2本の針を使い片方でセメントを注入し、もう片方で減圧する方法もあるが、この針1本で減圧と注入を行えれば患者のQOLをより高めることになるだろう。 現在、動物実験中である。将来的に骨セメント療法用の針として貢献する可能性がある。 ii)セメント注入量の計測技術 セメント注入量を正確に計測できる技術が求められる。至適な注入量を決定するために、注入量を正確に測る方法を確立しなければならない。現在は、注入量は医師の経験と勘により決められている。医師の申告する注入量には、シリンジ内や針内に残るセメントや骨外に漏れ出すセメントの量が必ずしも考慮されていない。骨内への注入量を正確に把握せずに合併症の有無は論じられない。 iii)カテーテル材質 カテーテルは、血栓閉塞等の合併症対策の点で、材質の進歩が期待される。 3.実現が望まれる新規の医療機器について a)治療 i)MRガイド下でのIVR MRガイド下での各種治療法が望まれる。MRガイド下の骨セメント療法など、術者が被曝を避けられるようになり、目覚しい進歩といえるだろう。 ii)四肢骨に対するIVR 四肢骨に対するIVRが期待される。現在は脊椎と骨盤を治療対象としているが、将来的には四肢骨に対するIVRも期待される。(整形外科的な方法より安全性の高い方法があれば) iii)ラジオ波焼灼法や凍結療法 ラジオ波焼灼法や凍結療法の進歩に期待している。 4.その他、医療機器の研究動向や今後の医療機器開発の方向性に対するご提言について 【企業との共同研究について】 企業等との共同研究には積極的に応じており、現在5社と共同研究している。1社は海外の企業である。 医師は商業価値のあるアイディアを企業に提供することが重要である。企業は医師のアイディアに自らのアイディアを上乗せしたり、試作品をスピーディに作ったりといった対応が重要である。 【筋骨格系疾患の診断・治療の方向性について】 i)骨セメント療法のいっそうの普及拡大 骨セメント療法のいっそうの普及拡大が重要である。疼痛に苦しむ高齢患者が多いが、病床の制約等から骨セメント療法の恩恵を受けられる患者が限られている。ただし、骨セメント療法の普及拡大にあたっては、認定制度(医師単位での認定)など安全を確保するためのシステムを確立する必要がある。保険診療が認められ、各地で見様見真似ではじめれば事故が起こる可能性が高い。 また、骨セメント療法を実施する病院では、適応判断や合併症対策として整形外科との連携が必須である。また骨セメント療法と整形外科的手術とを組み合わせることにより、整形外科的手術の時間短縮、患者への負荷軽減に加え、適応拡大にも繋がる。当院では、適用判断にあたり放射線科と整形外科脊椎専門医とでダブル診察をしている。
シーズDB 先進企業情報 重要論文情報
ニーズDB 医師インタビュー 臨床医Web調査 患者Web調査 過去の臨床側アンケート
リスクDB 市販前プロセス情報 市販後安全情報 PL裁判判例情報
低侵襲医療技術探索研究会 アーカイブ
リンク 学会 大学/研究機関 クラスター/COEプロジェクト 行政/団体 その他
メールマガジン