(1)診断機器
① 血管撮影装置
造影能の向上により、高解像度のイメージや三次元情報の構築が可能となった。また、ロードマップ(血管地図)を作成することにより、多様な情報を得られるようになり、カテーテル治療時の目的地(病変部位)までのアクセスが向上した。
バイプレーンエックス線装置の導入により、1回の造影剤注入で同時に2方向からの撮影が可能となったため、診断時間が短縮した。
② CT、MRI
現在のCTやMRIは、画像精度が向上し、細かい病変や血管を鮮明に表示できるようになった。
MRIでは、特に脳内の情報に加えて、頸動脈壁のプラークの画像化によりプラークの性状(脂肪、線維成分、石灰化、出血など)まで把握できるようになった。これにより、患者の動脈硬化の状態を従来よりも詳細に診断できるようになった。
マルチスライスCTでは、時間軸を加えた四次元画像の構築が可能となった。また、撮影時間が5秒程度に短縮したことにより、撮影時に患者が息を止めて身動きをせずにいる負担が軽減した。
③ 血管内超音波診断装置(IVUS)
血管内超音波診断装置も、頸動脈狭窄部の血管壁やプラークの性状を評価できる。脂肪、線維性成分、石灰化、壊死性成分などを周波数分析により色分けして描出する。これをバーチャルヒストロジーという。血管内超音波はステント留置後の血管内情報の把握にも役立つ。
(2)治療機器
① カテーテル、ガイドワイヤー
カテーテルおよびガイドワイヤーの種類とバリエーションが増えた。また、カテーテルおよびガイドワイヤーの柔軟性、選択性が向上し、安全性が増したことにより、従来は到達しなかった場所にまで到達可能となった。
② 塞栓材料(コイルなど)
塞栓材料のなかで最も進歩したものはコイルである。以前は、1社が数種類のコイルを販売しているのみであったが、現在は6社のコイルが本邦で使用可能である。さらにコイルの種類(形状や柔軟性、長さなど)が多様化したことにより、病変部への多様なアプローチが可能となった。たとえばコイルでは、ウルトラソフトやエクストラソフトといった、きわめて柔軟なものがあり、十分な柔らかさが実現されている。
また、吸収性の素材や膨張する素材などが塗布されたバイオアクティブコイルが少しずつ本邦にも導入されてきている。
③ ステント
日本で使用可能な頚部頸動脈に対する治療用ステントのうち、1種類が本年4月に保険が適用された。フィルタープロテクションと併用で用いるが、非常な勢いで需要が増している。脳動脈狭窄用ステントについてはまだ認可されていない。
④ プロテクション技術
ステント留置術時に血栓遠位飛散を防ぐためのプロテクション技術は、手術時の合併症として大きな問題となる脳梗塞の発生を予防する。近年、このプロテクション技術の性能が向上し、手術時の合併症としての脳梗塞が発症しにくくなった。
プロテクションの方法は大きく2種類に分けられる。ひとつは、血栓の下流に洗濯ネットのような網(フィルター)を設置し、崩した血栓を回収する方法である。血栓のみが網にかかり、血液はフィルターを通り抜けるため、血流を止めずに治療が行える。ただし、目詰まりを起こしたり、網の容量以上の量の血栓が剥離された場合には、網から血栓がこぼれる危険がある。
もうひとつは、血栓の下流でバルーンを膨らませて血流を止め、手前にある血栓を吸引カテーテルで吸い込む方法である。こちらの場合には、血流を一時的に完全に止める必要があること、吸引カテーテルによる吸引が完全ではないことが懸念される。