(1)診断
① MRI、CT
この10年で、MRI(T1T2)の進歩はめざましく、今後も、技術的にみて非常に大きなポテンシャルを持っている。
従来、脳血管等の状況を確認するためには、カテーテルを挿入して血管撮影をしなければならず、診断時の患者への侵襲性が高かった。MRI、CT-A、CTアンジオグラフィなどにより、ほとんど無侵襲で出来るようになった。診断の段階でのリスクが軽減されたことは、非常に大きな発展である。
② DBS(脳深部刺激療法)
実施件数は多くないが、パーキンソン病に対するDBS(脳深部刺激療法)は患者のQOL向上に大いに貢献している。DNSのための機器は、医療機器として、安全に使用できるようになった。
(2)治療
① 超音波の骨メス
脊髄手術や、脳深部手術は、超音波メスの登場により、非常に安全に実施できるようになった。超音波の骨メスは、超音波手術装置「CUSA」から発展した機器で、骨を削るための医療機器として開発された。従来は、骨の切断はドリルでおこなっていたが、高速回転による血管の巻き込み事故などの危険があった。超音波の骨メスはこうした危険がなく、骨の掘削が出来るという意味で、手術機器として非常に安全性の高いものである。
② 血管内治療技術(コイル、ステント)
脳血管分野で、近年急速に発展した技術としては、血管内治療技術があげられる。開頭せずに、カテーテルにより脳血管を治療できることや、手術が簡便で患者拘束性が低い等の理由から、臨床医のみならず一般国民から注目されている。ただし、安全面にはまだ問題がある。
■既存の医療機器の改良すべき点について
(1)既存の医療機器の改良すべき点について
① 顕微鏡手術
顕微鏡手術については、もっと高倍率の顕微鏡が必要である。顕微鏡手術のレベルアップとして、広い視野ではなく、今の拡大率の倍もしくは、3倍ぐらいになれば、もっといろいろなところで応用される可能性は極めて大きい。
手術用の顕微鏡の倍率が上がるということは、手術機器すべてについて、もっと細かい緻密な機械にならなければならない。こうした改良が実現されると、手術で行えることの幅が広がるだろう。
② 血管内治療(ステント、コイル)
近年、血管内治療がめざましく進歩したため、開頭手術が減ると考えていたが、予測したほどには減っていない。したがって、血管内治療の種々の機器に関しては、まだ改良の余地が大いにあると考えられる。
たとえばステントは将来性のある方法ではあるが、まだ改良が必要である。血管内治療をした後、頻繁に経過観察をしなければいけないこと、術中に血栓が飛ぶ危険があること、術後に抗血小板薬を飲み続けなければならないこと、などを考えると、その間に必要とされる医療費の点で患者の負担が大きい。
血管内治療の要改善点としては、血管を突き抜けないこと、血栓を飛ばして脳梗塞を引き起こさないこと、等があり、もっと確度の高い手法に発展させる必要がある。
動脈に対するコイル塞栓術は、長期成績が出ていないので、従来の方法と比べてどの程度貢献しているのかは、現在のところ疑問である。今後の塞栓率の向上が期待される。
ステントに関しては、一時的に血管の狭窄が広がるが、再狭窄という問題があり、長期予後のデータがまだ十分ではない。