ニーズDB:医師インタビュー
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小川 彰 先生
岩手医科大学
脳神経外科学講座 教授
脳神経外科

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1.ご専門の分野について

専門分野は脳神経外科である。専門とする主な疾患・部位は、脳卒中、脳腫瘍である。

実施頻度の高い手技は、脳血管障害の手術が一番多く、他病院で手を余したような非常に難易度の高い症例が中心である。脳腫瘍に関しては、頭蓋底の腫瘍など、かなり難易度の高い症例が県内の他院から、紹介されてくる。
脳神経外科全体としての手術件数は、年間400症例である。脳動脈瘤の手術件数は、年間100症例以上である。脳腫瘍の手術件数は、年間約100症例である。残りの200症例は、外傷、脊髄、脳出血などである。


2.ご専門分野に関わる既存の医療機器について

■この10年で、診療成績の向上や患者QOLの向上におおいに貢献したと考えられる医療機器

(1)診断
① MRI、CT
この10年で、MRI(T1T2)の進歩はめざましく、今後も、技術的にみて非常に大きなポテンシャルを持っている。
従来、脳血管等の状況を確認するためには、カテーテルを挿入して血管撮影をしなければならず、診断時の患者への侵襲性が高かった。MRI、CT-A、CTアンジオグラフィなどにより、ほとんど無侵襲で出来るようになった。診断の段階でのリスクが軽減されたことは、非常に大きな発展である。
② DBS(脳深部刺激療法)
実施件数は多くないが、パーキンソン病に対するDBS(脳深部刺激療法)は患者のQOL向上に大いに貢献している。DNSのための機器は、医療機器として、安全に使用できるようになった。
(2)治療
① 超音波の骨メス
脊髄手術や、脳深部手術は、超音波メスの登場により、非常に安全に実施できるようになった。超音波の骨メスは、超音波手術装置「CUSA」から発展した機器で、骨を削るための医療機器として開発された。従来は、骨の切断はドリルでおこなっていたが、高速回転による血管の巻き込み事故などの危険があった。超音波の骨メスはこうした危険がなく、骨の掘削が出来るという意味で、手術機器として非常に安全性の高いものである。
② 血管内治療技術(コイル、ステント)
脳血管分野で、近年急速に発展した技術としては、血管内治療技術があげられる。開頭せずに、カテーテルにより脳血管を治療できることや、手術が簡便で患者拘束性が低い等の理由から、臨床医のみならず一般国民から注目されている。ただし、安全面にはまだ問題がある。


■既存の医療機器の改良すべき点について

(1)既存の医療機器の改良すべき点について
① 顕微鏡手術
顕微鏡手術については、もっと高倍率の顕微鏡が必要である。顕微鏡手術のレベルアップとして、広い視野ではなく、今の拡大率の倍もしくは、3倍ぐらいになれば、もっといろいろなところで応用される可能性は極めて大きい。
手術用の顕微鏡の倍率が上がるということは、手術機器すべてについて、もっと細かい緻密な機械にならなければならない。こうした改良が実現されると、手術で行えることの幅が広がるだろう。
② 血管内治療(ステント、コイル)
近年、血管内治療がめざましく進歩したため、開頭手術が減ると考えていたが、予測したほどには減っていない。したがって、血管内治療の種々の機器に関しては、まだ改良の余地が大いにあると考えられる。
たとえばステントは将来性のある方法ではあるが、まだ改良が必要である。血管内治療をした後、頻繁に経過観察をしなければいけないこと、術中に血栓が飛ぶ危険があること、術後に抗血小板薬を飲み続けなければならないこと、などを考えると、その間に必要とされる医療費の点で患者の負担が大きい。
血管内治療の要改善点としては、血管を突き抜けないこと、血栓を飛ばして脳梗塞を引き起こさないこと、等があり、もっと確度の高い手法に発展させる必要がある。
動脈に対するコイル塞栓術は、長期成績が出ていないので、従来の方法と比べてどの程度貢献しているのかは、現在のところ疑問である。今後の塞栓率の向上が期待される。
ステントに関しては、一時的に血管の狭窄が広がるが、再狭窄という問題があり、長期予後のデータがまだ十分ではない。


3.実現が望まれる新規の医療機器について

穿通枝領域の梗塞の治療では、将来的に200μm、100μmといったオーダーの細さがの血管内治療器具が必要になってくる可能性は大いにある。
現状では技術的に難しいが、顕微鏡手術の手術でも、現状の3倍ぐらい術野の画像を拡大できれば、もっと細かいところまで治療できるようになる。
(2)虚血脳保護剤
強力な血栓溶解剤として、tPAが一昨年保険認可されたが、すべての脳梗塞に効くわけではなく、まだ効果も強力ではない。脳の血の巡りが悪くなった時、普通は3分間、脳の血管が詰まれば、脳が駄目になると言われている。しかし、薬によって脳の機能を維持できるような虚血脳保護剤が出来れば、大きな進歩となる。患者にとっても医師にとっても、余裕をもって手術計画などを立てることができる点、治療の可能性と範囲が広がりる点、患者のQOLに直接結び付くという点などから、メリットが大きい。


4.その他、医療機器の研究動向や今後の医療機器開発の方向性に対するご提言について

MRIは、近年高磁場化している。一般の開業医では0.5テスラの機器、普通の病院では1.5テスラの機器が使われており、最近ではさらに高磁場の3テスラの機器が普及してきた。
MRS(MRを使ったスペクトロスコピー)の技術の発展により、近い将来、脳の中の神経伝達物質などが、3次元画像化される見込み。これが実現すれば、MRIだけでほとんど診断が出来るようになる。MRIは、空間解像度が非常に高いため、微小な変異の診断にも役立つと考えられる。
こうした技術が実現すると、CTが不要になる可能性がある。また、今はRIを用いたがん診断でPETやSPECTなどが使われているが、将来的には、MRIでコリンなどを画像化して、微細ながんも検出できるようになる可能性がある。


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