ニーズDB:医師インタビュー
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菅谷 啓之 先生
船橋整形外科病院
スポーツ医学センター 肩関節・肘関節外科部長
整形外科

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1.ご専門の分野について

専門は整形外科で、特に肩関節・肘関節外科である。
肩・肘に愁訴をもつ患者が対象である。
疾患としては、肩については若年層では外傷性の肩関節不安定症、中高年層では腱板断裂が中心で、これらの疾患で全体の3分の2を占める。

外来では年間約12,000人(延べ人数)を診察している。
手術は年間約550例で、内訳は肩480例、肘70例である。すべて関節鏡を使った手術である。


2.ご専門分野に関わる既存の医療機器について

■この10年で、診療成績の向上や患者QOLの向上におおいに貢献したと考えられる医療機器

a)診断
i)MRI
MRIの精度があがった。

ii)CT
3次元画像として再構築したり、自由な角度から断面を切り取れるようになった。

b)治療
i)肩・肘領域の関節鏡手術用の機器
肩・肘領域の関節鏡手術用の機器はハードとソフトの両面で大いに進歩した。関節鏡の画像の品質が向上し、アンカーをはじめとしてインスツルメントの改良も飛躍的に進んだ。超速の進歩があった。
機器の進歩とともに手技も劇的に進歩した。肩・肘領域の関節鏡手術の進歩は目を見張るものがあり、肩・肘領域の整形外科医にとって技術修得の要望が高い最先端の手技となっている。


■既存の医療機器の改良すべき点について

a)治療
i)フレキシブルな関節鏡システム
フレキシブルな関節鏡システムが望まれる。関節鏡は硬性で真っ直ぐな棒状の形状をしているが、皮切の位置によって視野や操作が制限される。ある程度フレキシブルに方向を変えられるような関節鏡やフレキシブルなインスツルメンツがあれば、より正確で安全な手術を行えるようになる可能性がある。
既存医療機器の改良すべき点については、日本以外の先進国で普通に使用されている医療機器をみればよい。その先の改良点については、海外と同じように医療機器を使用してディスカッションできなければ発想することは難しい。


3.実現が望まれる新規の医療機器について

a)治療
新規の医療機器については、日本以外の先進国で普通に使用されている医療機器をみればよい。その先の研究開発については、海外と同じように医療機器を使用できるようにならなければ、発想は難しい。
たとえば、リバースシステム(骨頭と受け皿とが逆になった人工肩関節で腱板がなくても三角筋の筋力だけで手をあげられる)、吸収性材料によるアンカー(加水分解により吸収され骨に置換される)、ブリッジング(糸を使って縫わずに固定)用インプラントなどは海外で使用できるが日本では使えない。


4.その他、医療機器の研究動向や今後の医療機器開発の方向性に対するご提言について

【企業との共同研究について】
共同研究のリクエストには応じる。日々の臨床の中でたくさんのアイディアが生まれる。時間の制約はあるものの臨床的に興味を惹く研究であれば、できる範囲で協力をしたい。現在もいくつかの大学と連携して研究をしている。長期の研究であっても構わない。
現在は日本では薬事承認に時間がかかるため、欧米のメーカーに開発アイディアを提供することが多くなっている。

【筋骨格系疾患の診断・治療の方向性について】
i)医療機器の承認の迅速化
医療機器(特にインプラント)の承認の迅速化が必要である。承認が遅いことは日本の致命的な欠点である。患者も医師もいい医療機器を望み、メーカーがいいものを開発しても、薬事承認がなかなか通らない。以前、海外で5年以上使用され安全性も確立されていたインプラントについて国内の承認手続きを進めたことがある。PMDAに相談をしただけで多額の費用を要求された。治験を求められ、5年以上前に治験データを提出したが現在も承認されない。
<臨床への影響>
薬事承認が遅いと臨床の進歩に影響する。臨床で世界をリードしていても、海外で新しい医療機器が開発されたとき国内ではその医療機器を使用できないことで、ディスカッションにも参加できず、海外に抜き去られてしまう。承認プロセスを簡素化し、承認を迅速化しなければ日本は国際的な医療の進歩についていけなくなる。たとえば、ブリッジングテクニック(糸を使い結ばずに関節唇を固定する)は欧米や韓国では使用できるのに日本では使えない。臨床研究において新しい医療機器を使用できる環境は必須である。日本の医師は、海外の医師より手間のかかる道具を使い、海外の医師に負けない品質とスピードを実現しているというのが実情である。欧米では企業がしのぎを削り、新しい製品が次々に開発されている。
<医療機器価格への影響>
薬事承認が遅いことは医療機器の価格にも影響している。欧米メーカーの機器を日本で購入する場合、価格が米国の2倍以上になる。一方、アジアの他の国では同じ機器が米国の4分の1の価格で販売されている。医療機器を安価に入手したければ国産を開発するしかない。
<経済活動への影響>
臨床研究で国際競争力をもてば最新の機器の開発拠点が日本に置かれ、日本での開発投資が促進される可能性がある。
<リスク分担の考え方>
欧米で5~10年一般に使用され安全性の確立された医療機器については、迅速に承認できるよう、メーカー、医師、厚生労働省、患者が医療機器のリスクを分担する仕組みが必要である。すべてが厚生労働省の責任ということにはならない。欧米では安全性が確立された機器であれば、患者もインフォームドコンセントによりリスクを理解したうえで、安心してサインできる。

ii)日本としての臨床水準の向上策の必要性
日本としての臨床水準の向上策が必要である。海外からは日本としての臨床のコンセプトが問われる。特に肩領域においてはエキスパートが少なく大学内だけでは勉強できないため、他の大学との交流が必要である。当院では多くの大学から研修医を受け入れており、常時5~6人の医師が研修を行っている。


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