ニーズDB:医師インタビュー
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片山 容一 先生
日本大学
副総長 医学部長・大学院医学系研究科長
脳神経外科

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1.ご専門の分野について

専門領域は、脳外科と定位・機能神経外科である。
対象とする主な疾患は、脳腫瘍、脳血管疾患(動脈瘤、狭窄)、定位・機能神経外科領域の疾患などである。

実施頻度の高い手技は、脳腫瘍摘出術、脳深部刺激術である。手術件数は、脳腫瘍摘出術が約120件/年、脳深部刺激術が約100件/年である。
当院では定位・機能神経外科の手術件数が全国に比べて多い。当該領域は、脳機能を手術によって調整することを目的としている。この専門領域のノウハウは、脳腫瘍や脳血管疾患の治療でも役立つため、当院の手術は他院とは異なるスタイルで実施されている。
定位・機能神経外科の技術は、脳の働きをマッピングあるいはモニタリングしながら手術することで、精度の高い治療が可能である。


2.ご専門分野に関わる既存の医療機器について

■この10年で、診療成績の向上や患者QOLの向上におおいに貢献したと考えられる医療機器

① 治療
a) 神経モニタリング技術
覚醒下の手術は安全性の向上に貢献したが、神経モニタリング手術は、近年非常に進歩した。神経モニタリング手術は大きく2種類からなり、ひとつが神経線維・神経細胞を電気生理学的に記録・モニタリングする方法である。もうひとつが、脳血流や脳代謝をモニタリングする方法である。
この手技の進展により、安全なだけでなく効果的に手術を行うことができる。

b) 脳深部刺激術
脳深部刺激術は、患者QOLの向上に大きく貢献した。
1998年に研究班が設置され、2000年に不随意運動の治療技術として保険収載された。対象疾患はパーキンソン病、筋ジストニアなど。これ以外にもさまざまな疾患の治療に適用できる。
脳深部刺激術に使用される機器は、脊髄刺激や脳表面の大脳皮質刺激術などにも同じようなものが使用される。世界的にみると件数は脊髄刺激の方が多い。


■既存の医療機器の改良すべき点について

① 治療
a) 覚醒下手術
片山氏は、わが国ではじめて覚醒下手術を実施した実績を有する。その後、12年にわたり当該手術の実績を蓄積してきた。当初はセンセーショナルな手術として積極的に取り組み、多くの経験を積んできたが、その結果、それほど患者のQOL向上には貢献し得ないという結論に至っている。
覚醒下手術は、安全な手術の実現には貢献したが、医療技術は安全なだけでは意味がなく、十分な効果が必要である。こうした観点からみると、覚醒下手術よりもモニタリング技術のほうが効果はある。

b) 脳深部刺激療法
バッテリーの小型化、リチャージャブルなバッテリーの開発、刺激パターンの多様化などが今後の課題である。


3.実現が望まれる新規の医療機器について

① 治療
a) 患者の状態に応じて刺激できる脳深部刺激装置
既存の脳深部刺激療法装置は、あらかじめプログラムされた刺激パターンでしか刺激ができないため、持続的な症状を有する疾患のみが治療対象となっている。
今後は、患者の状態に応じた刺激が行えるものが必要である。これは既存製品とは概念の大きく異なる装置である。
刺激を変化させることができれば必要に応じて筋力を瞬間的に補助することなどに利用できる。たとえば筋肉の活動を予測し、モジュレーションする。これは、神経リハビリテーションの革命ともなる技術である。
これが実現するとリハビリテーションと補い合って運動麻痺やその他の運動障害などにも効果を上げ、診療成績を大きく向上させることができる。対象者は、麻痺による運動障害のある患者などで、原因疾患は脳卒中の後遺症である。脳卒中は有症率第3位の疾患であり、実現による社会的インパクトは高い。
この分野は現在文部科学省が推進しているブレイン・マシン・インターフェース(Brain Machine Interface:BMI)にもつながっており、新しい動きを生み出す可能性がある。


4.その他、医療機器の研究動向や今後の医療機器開発の方向性に対するご提言について

a) リスクの考え方について
日本人の国民性ともいえるゼロリスクを求める姿勢は問題である。医療機器の分野でもリスクがあると企業は開発しない。医療の現場においても患者に代わってリスクをとるという精神性が失われてきた。国民は医療の面で不利益を被っていることに気づくべきである。マスコミは医療に関しての報道を改善する必要がある。
研究段階のリスクは、従来は医師と患者で分かち合っていたが、現在では医師側がすべてのリスクを負うことを望む患者が多く、研究開発中の治療機器の進歩を妨げている。日本の企業が海外で開発することになると、国内の開発力が低下しノウハウも蓄積しない。
低侵襲医療機器の開発では、手技も結果も低侵襲ということを求めれば何の役にも立たない。手技が低侵襲で結果が高侵襲なものは大変効果的である可能性を持っているが、開発段階になると結果が高侵襲なもののリスクを誰が取るかという話が出てきてだめになる。

b) 保険収載されていない医療について
保険収載されていない医療を支える制度が必要である。現在では保険収載されていない治療を行う場合は、全額自費になってしまう。そうすると研究段階の治療でリスクをとって治療を受けてもいいという患者も治療を受けるのを断念してしまうことになる。


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