ニーズDB:医師インタビュー
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近藤 幸尋 先生
日本医科大学
泌尿器科学教室 教授
泌尿器科

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1.ご専門の分野について

専門は泌尿器科である。疾患としては腫瘍・がんを対象にしている。
具体的には、腎がん、腎盂がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がんなどである。

近年、前立腺がんの患者が増加している。前立腺がんに対する腹腔鏡下全摘出術を年間60件(関連病院での実施を含む)実施している。


2.ご専門分野に関わる既存の医療機器について

■この10年で、診療成績の向上や患者QOLの向上におおいに貢献したと考えられる医療機器

1)診断
① 画像診断装置
画像診断装置も進歩した。超音波診断装置は、カラードップラー機能、3次元画像などの機能に加えて造影剤が開発され、解像度が向上した。
CTは、3次元画像の構築技術によって、血管造影をしなくても血管走行を確認できるようになった。診断のための血管造影のほとんどがCTに移行した(以前は血管造影が100%だったが現在は10%以下)。

2)治療
① 内視鏡下の手術器具
この10年で診療に貢献した医療機器としては、内視鏡下の手術器具があげられる。特に、止血装置が進歩し、バイポーラの電気メスを用いたシーリングシステムが開発されたことは大いに貢献した。
超音波による電気メスは10年前からあったが、ミスト(水蒸気)とキャビテーションの問題を抱えていた。超音波メスと組織との摩擦熱によりミストが発生し、内視鏡を曇らせ術者の視界を損なわせた。また、超音波によるキャビテーションにより組織を傷つけるリスクがあった。現在の装置では、形状の工夫等により、この問題が解決されている。
医療機器の進歩により、患者のQOLの向上がなされている。


■既存の医療機器の改良すべき点について

1)治療
① 膀胱内の難しい位置にできた腫瘍への対応
既存の機器の改良すべき点としては、たとえば、膀胱がんの経尿道的手術について、膀胱内の摘出しにくい位置にできた腫瘍を無理なく摘出できる機器がほしい。膀胱の形状は球体だが、現在の内視鏡は直線的で硬質であるため、腫瘍のできる位置によっては内視鏡の「死角」となり、がんを摘出しにくくなる。このような症例は全患者の10人に1人以下であるが臨床上大きな問題である。現在は、患者の股関節の角度を工夫して処置を行っているが、高齢の患者などでは股関節に負担をかけられない。
その時にも、ある程度フレキシブルなアングルを選択できる切除鏡の開発が待たれる。
機器のイメージとしては、フレキシブルなファイバースコープに摘出のための機能を付加したようなものである。


3.実現が望まれる新規の医療機器について

1)診断
① 尿管から腎盂まで検査できる細径内視鏡
新規の医療機器としては、尿管から腎盂まで検査できる内視鏡があげられる。直径が3~5mmと細く、材質が粘膜を傷つけない優しいもので、画素数が多い内視鏡である。
現在、腎臓の検査は入院下で行われるが、この内視鏡が実現すれば、外来で尿管から腎盂まで診ることができるようになる。


4.その他、医療機器の研究動向や今後の医療機器開発の方向性に対するご提言について

① 新規の医療機器の開発・導入促進のための診療報酬制度の見直し
わが国は診療報酬の制度上、新規の医療機器を導入しにくくなっているので、改善すべきである。米国では高額な機器を使用してもその分、診療費を上乗せできるが、わが国の場合は診療報酬が固定されている。新規の医療機器の導入は、経済的に見合わないことが多く、機器導入のハードルとなっている。
これに関連して、企業の研究開発も診療報酬に関して収益の見合う内容しか行われない。大胆な新規開発ができなくなっていると思う。

② 患者が医療情報を適切に収集して理解するための仕組みの実現
患者が自分の病状や治療方法に関する情報を適切に収集し、理解できる仕組みが求められる。患者がインターネットなどから情報を入手しやすくなったが、ときどき自分の病状と情報がかみ合っていないことがある。患者が大量の情報を消化できていないことがある。患者に理解しやすいアルゴリズム的なものの作成が待たれる。


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