中川 照彦 先生 社会福祉法人同愛記念病院 整形外科 関節外科
1.ご専門の分野について 専門は肩関節外科で、主に肩腱板断裂や反復性肩関節脱臼を対象としている。 肩の鏡視下手術が多く、年間150~170件実施している。 2.ご専門分野に関わる既存の医療機器について ■この10年で、診療成績の向上や患者QOLの向上におおいに貢献したと考えられる医療機器 a)診断 i)MRI 磁場強度が0.5Tから1.5Tになったことで解像度があがり腱板断裂部位がかなり鮮明に見えるようになり、断裂の大きさが術前に把握できるようになった。また腱板や筋肉の変性などの評価が可能になった。肩専用コイルを使用して撮影している。 ii)3次元CT 3次元CTによって画像の解像度が非常によくなった。画像の再構成に要する時間も短縮された。30分くらいで画像ができる。患者さんにも説明しやすくなった。 b)治療 i)電気蒸散器と潅流ポンプ 2000年頃に電気蒸散器(radio frequency device:RF)が登場し、肩の鏡視下手術が広く行われるようになった。出血時に一時的に関節内圧を上げる潅流ポンプと併用することで比較的容易に止血でき、視野を確保しやすくなった。膝の場合はターニケット(止血帯)を使用できるが肩では使用できない。潅流液として以前は生理食塩水を使っていたが、体液の組成により近いリンゲル液を使用するようになった。 ii)関節鏡 関節鏡は画像が鮮明になった。30度と70度の斜視鏡があるが、特に70度の斜視鏡の視野がよくなった。現在は3CCDの関節鏡もあるようだ。 iii)縫合関連機器 縫合のための各種器具が進歩した。糸をつかんだり、糸を通したりする操作がしやすくなった。 ■既存の医療機器の改良すべき点について a)診断 i)より高解像度のMRI より高解像度のMRIが望まれる。3TのMRIの画像を見たことがあるが、軟骨損傷までよく見えた。 b)治療 i)電気蒸散器と潅流ポンプ 電気蒸散器に関しては、もう少し早く蒸散できるとよい。 潅流ポンプは、設置や操作がより簡便なものが望ましい。現在の装置でも悪くはないが、慣れていない看護師が設置しようとすると間違えることがある。 ii)関節鏡 3次元的に術野を見られるものがほしい。 3.実現が望まれる新規の医療機器について a)診断 i)造影剤を使用せず関節唇損傷を撮影できるMRI 造影剤を使用せず関節唇損傷を撮影できるMRIが望まれる。現在、肩関節の関節唇損傷や腱板不全断裂では、MRI撮影時に関節内に造影剤を注入しており、患者さん、術者にとって負担となっている。 b)治療 i)安全な縫合機器 しっかりと組織を通せる針長があり、かつ十分な強度をもち、針の破損が生じない安全な縫合器がほしい。 4.その他、医療機器の研究動向や今後の医療機器開発の方向性に対するご提言について 【企業との共同研究について】 現在は診療が忙しく企業等との共同研究は難しい。 【筋骨格系疾患の診断・治療の方向性について】 i)診療報酬点数 日常の診療ために経済的な基盤は重要である。電気蒸散機器、シェーバー、アブレーダーなどのディスポーザル材料について、診療報酬点数に収載していただきたい。肩の鏡視下手術1回で人件費を含め13~25万円の費用がかかるが、ディスポ部分だけで約13万円かかるため病院側の負担が大きくなっている。 手術はみんなで行うものなので、ドクターフィーの必要性はあまり感じていない。 ii)大学 大学には最先端の医療に期待したい。 iii)病院 病院は大学等による研究成果を生かして診療を行う。
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