ニーズDB:医師インタビュー
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沼口 雄治 先生
聖路加国際病院
放射線科 特別顧問
放射線科

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1.ご専門の分野について

専門は放射線科である。
主な対象疾患は、骨粗しょう症およびがんの転移による脊椎の圧迫骨折である。また脳血管治療について若手の指導を行っている。

実施頻度の高い手技は経皮的椎体形成術(percutaneous vertebroplasty:PVP)いわゆる「骨セメント療法」である。当院では年間約300例、延べ1,100例に実施した。

当院の経皮的椎体形成術は2本の注入針による2針法で行う。正則両方を同時撮影可能な透視装置を確認しながら2本の針を左右両方の椎弓根から椎体内へ刺入れる。片方からセメントを注入し、もう一方から除圧および不必要な水や血液の排出を行う。診断には造影剤投与下に1.5テスラMRIを用い、治癒していない部分と残った骨とを確認しながら適用を判断している。2針法であれば、椎弓根形成術を行うことも可能である。


2.ご専門分野に関わる既存の医療機器について

■この10年で、診療成績の向上や患者QOLの向上におおいに貢献したと考えられる医療機器

a)治療
i)経皮的椎体形成術
経皮的椎体形成術(骨セメント療法)が行われるようになった。注入機器の改良も進んでおり、セメントを密閉して混ぜられセメント特有の臭いを抑えられる器具などが開発されている。米国ではさまざまな機器が販売されているが、個人輸入をするにしても高額で、日本ではなかなか使用できない。


■既存の医療機器の改良すべき点について

a)診断
i)経皮的椎体形成術のための撮影装置
脊椎に特化したコンパクトで安価な撮影装置が望まれる。撮影方式は、できれば正面と側面を同時に撮影できるバイプレーン、もしくはすばやく正側を切り替えられるシングルプレーンがよい。多くの機能は必要ない。脊椎に特化させ、コンパクトで安価な装置が望まれる。今後、高齢者が増え、脊椎IVRの必要性はいっそう高まると考えられる。

b)治療
i)術者の被曝を防止できる骨セメント注入器
術者の被曝を防止できる骨セメント注入器が望まれる。術者が患者から離れて施術できるよう、具体的には、連結管により長さを延長することができ、注入量を微調整でき、注射器内で骨セメントが固まらない機能(温度が上がると骨セメントが固まる)を備えた注入器が望まれる。経皮的椎体形成術はX線のイメージガイド下で行われるが、X線が患者の体に当たると散乱線が放出されるため術者が被曝する。

ii)経皮的椎体形成術に特化した骨セメント
経皮的椎体形成術に特化した骨セメントが望まれる。現在は、経皮的椎体形成術のための安価な骨セメントがなく、整形外科や脳外科で使用されてきたポリメチルメタクリレイト(polymethyl methacrylate:PMMA)を使用している。骨に近い性質をもち、体内で骨になるような材料があるとありがたい。現在、最も骨に近い材料はハイドロキシアパタイト(Hydroxyapatite:HA)だが1グラムで2万円と高額である。1回の治療で10グラム程度の骨セメントを使用する。欧州では、セメント周辺に骨形成を促進する作用のあるセメント(CORTOS)が開発されている。


3.実現が望まれる新規の医療機器について

a)治療
i)骨の成長を促進させる遺伝子治療
骨の成長を促進させる遺伝子治療が望まれる。経皮的に注入することで骨が形成されるもの。


4.その他、医療機器の研究動向や今後の医療機器開発の方向性に対するご提言について

【企業との共同研究について】
企業等の共同研究には積極的である。企業に対してアイディアを提供するようにしている。企業にアイディアを提供し、企業が作成した試作品を臨床で使用し、さらに改良を進める方法で共同研究を進めたい。

【筋骨格系疾患の診断・治療の方向性について】
i)経皮的椎体形成術が有効な適用に関するエビデンスの整備
最近、経皮的椎体形成術の有効性を否定する論文が2報、The New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載された。2報とも骨セメントを注入した群と注入しない群とで成績に差がないとの結果であった。エビデンスはきわめて重要である。ただし、否定的な論文については、対象患者うち30%から40%しか協力していないこと、適用判断や手技の適切さなど、議論の余地がある。当院での1,000例を超える治療経験から経皮的椎体形成術が特に有効な適用があると信じており、全国の指導的立場にある施設として大学病院と共同で臨床試験の準備を進めている。国際的にはVERTOS 2試験が進められており、その動向にも注目している。

ii)保険外診療について
日本は保険診療について厳しく規制されているが、保険外診療にはほとんど規制がない。エビデンスが不十分な機器を医師であればほぼ自由に使用することができる。審査機関を設置するなど法制度の整備が必要ではないか。

iii)医療機器の承認について
医療機器の承認の迅速化が必要である。欧米で安全性が確かめられ、当たり前のように使用されている医療機器については比較的早期に導入できるようにしてもらいたい。日本は1~2世代前の機器しか使用できず、欧米にとっては在庫をさばく市場になっているようなものである。日本はますます老齢化していく。背骨治療用の安価な機器の導入について、国にサポートしていただけるとありがたい。


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