ニーズDB:医師インタビュー
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仲尾 保志 先生
元赤坂診療所
院長
整形外科

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1.ご専門の分野について

専門分野は整形外科である。四肢を対象としているが99%は手の外科である。特に腱鞘炎、末梢神経損傷(手根管症候群、肘部管症候群など)の患者が多い。

年間300件の手術を行っており、実施頻度の高い手技は、手の最小侵襲手術(内視鏡手術や顕微鏡手術など)である。初診患者は年間1,500人である。手術が必要な患者が日本全国の医療機関から紹介されてくるため、患者5人に1人が手術の適用となる。腱鞘炎の内視鏡手術は指1本あたり2mmの傷を2箇所で治療でき、コスメシス(美容)を含め患者のQOLを高められる。従来の手術では指1本の手術に2cm、2本で4cm、3本で6cmというように、手術が必要な指の数が多くなるほど傷が大きくなる。いかに患者の侵襲を軽減するかを考えて治療を行っている。


2.ご専門分野に関わる既存の医療機器について

■この10年で、診療成績の向上や患者QOLの向上におおいに貢献したと考えられる医療機器

a)治療
i)手の外科用の内視鏡システム
手の外科用の内視鏡システムが開発され、内視鏡下に腱鞘炎の手術を行えるようになった。内視鏡はその操作のために空間を必要とする。このため、従来の内視鏡手術は関節など空間のある部位だけが対象とされ、手のひらなど空間のない部位は対象にならなかった。この10年で、空間を人為的に作り出す内視鏡システムの臨床応用が進んだ。現在、仲尾先生自身が開発したものを含め4~5種の製品がある。
内視鏡は診断的価値も高い。従来の手術法に比べて、低侵襲でありながら広範囲に診断することが可能になった。腱鞘炎手術の場合、従来の直視下手術では視野が1cm角であるのに対して、内視鏡下手術では外套管の軸方向に5cmの範囲をみることができる。腱鞘炎の原因となる箇所を外套管の軸方向に診断しながら治療することができ、きわめて有用である。


■既存の医療機器の改良すべき点について

a)治療
i)高解像度で力学的強度の高い内視鏡
高解像度で力学的強度の高い内視鏡が望まれる。内視鏡画像の解像度のさらなる向上に期待したい。細かい血管の状態など、よく見えたほうがよい手術ができる。ようやく3CCD方式の内視鏡が開発された。今後は、ハイビジョンの内視鏡が理想である。
また「強度」の向上にも期待したい。内視鏡は細くて長いためベンディング(曲がる)が生じる。手術は繊細だが、機材に関してはかなりハードユースであり、これに耐えるものがほしい。細いが絶対に曲がらないものがほしい。


3.実現が望まれる新規の医療機器について

a)治療
i)体外からリモート操作可能な体内駆動型の診療機器
整形外科領域で、体外からリモート操作可能な体内駆動型の診療機器があれば画期的ではないか。2~3mmの切開で小さな機器を送り込み、体内を診断して処置してくるようなものである。整形外科の領域では、こうした発想による機器が少ない。消化器領域におけるカプセル内視鏡や循環器系領域におけるステント留置術に相当するような機器がない。たとえば、内視鏡等によって、骨折した骨の髄腔内へステントのようなものを送り込み、膨らませるとパッと骨折を固定できるような機器ができれば画期的である。すでに「髄内釘」という髄内に挿入して骨折治療を行う機器があるが、髄内釘の材料を形状記憶合金にして髄内に挿入しておくと、時間経過により、変形していた骨折がまっすぐに矯正されていくようなものに改良できると面白いのではないか。


4.その他、医療機器の研究動向や今後の医療機器開発の方向性に対するご提言について

【企業との共同研究について】
企業等との共同研究については積極的に応じたい。臨床をやっていると多くのアイデアが浮かんでくる。こうしたアイデアを製品に結実させたい。
自身が考案した腱鞘炎の内視鏡手術システムは、最初に国内の医療機器メーカーに共同開発を打診したが積極的に応じてくれる会社はなかった。一方、米国スミス・アンド・ネフューに提案をしたところ30分の説明でOKが出た。今は、その機器が、米国から日本に逆輸入されて様々な医療機関で使用されている。

【筋骨格系疾患の診断・治療の方向性について】
i)最前線の臨床医と製造業とによる医工連携
最前線の臨床医と製造業とが遠く、なかなか接点が生まれないことが問題である。一般に、企業側は医工連携といえば大学(医学部や付属病院)との連携を想定するし、研究開発を助成する行政機関も開発体制に有名大学が名前を連ねられることを好む傾向がある。ゲノム科学等の大型研究設備を要するものであれば大学中心の医工連携がよいが“すぐに患者の手のとどく改良”は最前線の開業医との連携が重要である。
開業医は月曜日から金曜日まで毎日患者と接点があるので、圧倒的に患者と接している。目の前の患者にすぐに活かせる改良のアイデアが日々生み出されているが、製造業との接点を持てないためにほとんどのアイデアが実用化されていない。開業医のアイデアが製品化できる人に出会えば、もっと独創的な発想の医療機器が出てくるように思う。開業医のもつ感性はiPodのような医療機器を生み出す可能性を秘めている。

ii)多様な企業の医療参入について
企業としては、医療機器メーカーだけでなく家電製品メーカーも医療に参入してほしい。家電製品メーカーも医療に使える技術やアイデアをもっていると思われる。たとえばプラゲノム株式会社の技術を整形外科の材料に応用し、材料に組み込まれた情報の変化から、骨癒合や神経再生、腱生着の度合いを計測できれば面白いのではないか。

iii)患者視点の重要性について
近年、整形外科でもコスメシスが重視されるようになってきた。医師視点の評価基準では機能回復面からexcellent、good、poorといった評価をしていたが、患者視点の評価(満足度評価)では、手術後の傷のコスメシスや入浴制限日数などの項目が含まれる。こうした患者視点を重視し、そのためにはどのような方法で、どんな機器を使えばよいかを考えることが重要である。


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